Case87 就業規則の不利益変更に関する最高裁判例・秋北バス事件・最判昭43.12.25民集22.13.3459【百選10版20】

(事案の概要)

 原告労働者の入社当時、被告会社には定年の定めはなく、途中で施行された就業規則による定年の定め(一般職種につき50歳)も、主任以上の職にある原告には適用されていませんでした。

 ところが、会社は、主任以上の職にある者の定年を55歳とする就業規則の変更を行い、原告が既に定年に達していることを理由に原告を解雇しました。

 本件は、原告が定年を55歳とする新たな就業規則は原告に対して効力が及ばないと主張して、雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。

 当時は、就業規則に関する労働契約法7条、9条、10条がありませんでした。

(判決の要旨)

一審判決

 一審は、原告の請求を認容しました。

控訴審判決

 控訴審は、使用者は原則として就業規則の制定、変更により労働条件を一方的に決定、変更できるとして、原告の請求を棄却しました。

上告審判決

 最高裁は、新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないと解すべきであるとしつつ、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとしました。

 そして、本件の55歳定年制については、低きに失するものとはいえず、その他の事情を総合考慮すれば決して不合理なものということはできないとして、原告の上告を棄却しました。

(コメント)

 本判例及びその後の就業規則に関する判例で展開された判例法理は、後に労働契約法7条、9条、10条として成文化されました。現在ではこれらの条文の解釈問題になります。

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