Case150 職種限定の労働者につき復職後直ちに従前の業務に復帰できない場合でも比較的短期間で復帰可能な場合には債務の本旨に従った労務の提供がないとはいえないとした事案・全日本空輸(退職強要)事件・大阪高判平13.3.14労判809.61
(事案の概要)
職種限定契約により客室乗務員として勤務していた原告労働者は、通勤中の交通事故により約4年間休職しました。原告は、復職後に客室乗務員としての復帰者訓練を受けましたが3回とも不合格とされました。被告会社は、原告に仕事を与えず、三十数回の面談を行い、大声を出したり机を叩いたりして退職勧奨しました。
会社は、3回目の訓練が不合格となった後、債務の本旨に従った労務の提供ができないことなどを理由に原告を解雇しました。
本件は、原告が解雇無効を主張して雇用契約上の地位の確認や賃金の支払いを求めたほか、違法な退職強要があったとして慰謝料1100万円の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
1 解雇の有効性
判決は、休職からの復職後、労働者が直ちに従前の業務に復帰できない場合でも、基本的な労働能力に低下がなく、復帰不能な事情が休職中の機械設備の変化等によって具体的な業務を担当する知識に欠けるというような、休職にともなう一時的なもので、比較的短期間で復帰可能な場合には、債務の本旨に従った履行の提供ができないとはいえないとしました。
また、会社には、休職に至る事情、使用者の規模、業種、労働者の配置等の実情から見て、短期間の復帰準備時間を提供したり、教育的措置をとるなどが信義則上求められ、このような手段をとらずに解雇することはできないとしました。
そして、原告が債務の本旨に従った労務の提供ができないとはいえず、解雇は無効であるとしました。
2 退職強要
判決は、本件退職勧奨は、面談の頻度、時間の長さ、上司の言動から、社会通念上許容しうる範囲を超え違法な退職強要であり、不法行為に当たるとしました。
もっとも、結果として原告が退職していないこと等から慰謝料額は80万円としました。
※上告