Case158 無期雇用契約から有期雇用契約への労働条件変更に対する労働者の同意は自由な意思に基づくことが必要であるとした事案・社会福祉法人佳徳会事件・熊本地判平30.2.20労判1193.52
(事案の概要)
原告労働者は、NPO法人と無期雇用契約を締結していましたが、NPO法人から被告法人に対する事業移管に伴い、被告法人と雇用契約を締結しました。
原告が被告法人で就労を開始した後に、被告法人は原告に対して労働条件通知書および確認書と題する書面を原告に交付し、原告はこれに署名押印しました。労働条件通知書には、契約期間を1年とすること等が記載されていました。
1年後、被告法人が契約期間満了を主張したため、契約期間の定めの有無が争いとなりました。本件は、原告が雇用契約上の地位の確認等を求めた事案です。
被告法人は原告に対して3度の解雇も行っていますが、いずれも無効と判断され、違法な解雇に対する慰謝料30万円も認められています。
(判決の要旨)
判決は、当初の原告と被告法人との雇用契約は、期間の定めの合意があったとは認められないとしました。
そのうえで、原告にとって期間の定めの有無は賃金等と同等に重要な事項であり、当該労働条件変更にかかる同意の有無については、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容および程度、労働者により当該変更を受け入れる旨の行為がされるに至った経緯およびその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点から判断されるべきであるとしました。
そして、原告が労働条件通知書に署名押印する前の被告法人の説明が不十分であったことや、原告が署名押印をしなければ解雇されると思って署名したこと等から、変更合意の存在を否定し、原告の主張を認めました。
※控訴後和解