Case159 育休明けの時短勤務のために有期雇用への転換が必要であるとの説明に基づいてされた有期雇用契約書への署名が自由な意思に基づかず無効であるとされた事案・フーズシステムほか事件・東京地判平30.7.5労判1200.48
(事案の概要)
原告労働者(女性)は、無期雇用の事務統括として被告会社で働いていました。原告は、育児休暇からの復帰にあたり時短勤務を希望しましたが、会社は勤務時間を短縮するにはパート社員になるしかないと虚偽の説明をしました。原告は、やむなく有期雇用の雇用契約書に署名押印しました。
本件は、原告が有期雇用への変更の無効を主張して、会社に対して事務統括としての雇用契約上の地位の確認等を求めるとともに、被告代表者らに対して損害賠償請求した事案です。
なお、その後会社は原告を解雇しましたが、判決は解雇無効と判断しています。
(判決の要旨)
判決は、所定労働時間の短縮申出に際してされた労働者に不利益な内容を含む使用者と労働者の合意が有効に成立したというためには、当該合意により労働者にもたらされる不利益の内容および程度、労働者が当該合意をするに至った経緯およびその態様、当該合意に先立つ労働者への情報提供または説明の内容等を総合考慮し、当該合意が労働者の自由な意思に基づいてなされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することが必要であるとしました。
そして、有期雇用への変更に伴う原告の不利益が大きいことや、会社の虚偽の説明がなされたこと等から、原告の有期雇用の雇用契約書への署名は自由な意思に基づくものではないとして、有期雇用への変更を無効とし、事務統括としての地位や有給休暇請求権等の確認を認めました。
また、自由な意思に基づかないで有期雇用契約を締結させたことは、育児介護休業法23条の2の禁止する不利益取扱いに当たるとして、会社らに対して不法行為に基づき慰謝料50万円等の支払いを命じました。
※確定