Case182 36協定の過半数代表といえるためには過半数の労働者が支持していると認められる民主的な手続きが必要であるとした最高裁判例・トーコロ事件・最判平13.6.22労判808.11【百選10版39】
(事案の概要)
被告会社には、時間外労働の事由を定める36協定がありましたが、本件36協定は、会社の役員及び従業員全員で構成される「友の会」の代表Aが過半数代表として締結したものでした。
原告労働者は、会社から残業を求められ、毎日のように30分~1時間45分程残業していましたが、眼精疲労を訴え長時間の残業は無理であると述べるようになりました。会社は、原告に対して1週間毎日3時間30分残業するよう残業命令を発しましたが、原告は眼精疲労の診断書を提出し、残業を拒否しました。
会社は、業務命令違反で原告を解雇しました。
本件は、原告が本件解雇の無効を主張し、会社に対して雇用契約上の地位確認や賃金の支払い、慰謝料の支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
1審判決
1審は、本件36協定は親睦団体の代表者Aが自動的に労働者代表になって締結されたものであり、作成手続において違法・無効であること、原告が相当時間の残業をして眼精疲労を訴えて本件残業命令を拒否したことなどを理由に本件解雇を無効とし、地位確認及び賃金の支払いを認めました(慰謝料請求は棄却)。
控訴審判決及び上告審判決
控訴審は、36協定の当事者としての過半数代表の選出について、通達(>昭和63・1・1基発1号)を挙げつつ、適法な選出といえるためには、当該事業場の労働者にとって、選出される者が労働者の過半数を代表して36協定を締結することの適否を判断する機会が与えられ、かつ、当該事業場の過半数の労働者がその候補者を支持していると認められる民主的な手続がとられていることが必要であるとしました。
そのうえ、「友の会」は親睦団体であって労働組合ではなくAが過半数代表者として民主的に選出された証拠はないとして、本件36協定と本件残業命令の効力を否定し、1審判決を維持しました。
上告審も、控訴審の判断を正当としました。