Case200 1年間勤続した場合に支給される勤続奨励手当の月割額を毎月の給料日に支給し労働者が期間途中に退職した場合には全額返還する旨の約定が無効とされた事案・東箱根開発事件・東京高判昭52.3.31労判274.43

(事案の概要)

 原告会社が、退職した被告労働者に対して、勤続奨励手当の返還を求めた事案です。

 会社では、1年間の雇用期間を勤続した場合に支給される勤続奨励手当を、毎月その月割額を労働者に前貸し、1年未満で退職した場合には全額返還することとしていました。

 被告労働者が期間途中で退職したため、会社は被告労働者に対して勤続奨励手当の返還を求めました。

(判決の要旨)

 判決は、労働者の希望の有無を問わず、全社員に毎月の給料日に勤続奨励手当の月割額が支給されていること、月割額が月額給与の約半分を占めていること、貸付金は無利息で担保措置も講じられていないことなどから、勤続奨励手当の月割額は労務の対価として毎月支給される賃金の一部であり、中途退職の場合にこれを返還する旨の約定は労働者を強制的に足留めさせることを禁じている労基法5条、前貸金による相殺を禁止した同法17条等の脱法行為にあたり民法90条の公序良俗に反し無効であるとし、会社の請求を棄却しました。

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