【Q&A】退職の基礎知識

目次

Q1 退職に会社の同意は必要?

Q 会社から「後任を見つけてくるまで辞めさせない」と言われました。退職に会社の同意は必要なのでしょうか?

A 退職に会社の同意は必要ありません。

 退職の原因には、主に、 ①労働者の一方的な意思表示により退職の効果が生じる「辞職」 ②労働者と使用者の合意により退職の効果が生じる「合意退職」 ③使用者の一方的な意思表示により退職の効果が生じる「解雇」 があり、このうち「辞職」に使用者の同意は必要ありません。

Q2 退職はどれくらい前に会社に伝えるべき?

Q 退職したい場合どれくらい前に会社に伝える必要がありますか?

A 無期労働契約の場合、2週間前に会社に退職の意思を伝えれば退職することができます(民法627条1項)。

 民法627条1項は、退職の3パターンのうち「辞職」の自由を定めたものです。

 さらに、やむを得ない事由がある場合には、即時に退職することができます(民法628条。有期労働契約の条文ですが無期労働契約にも適用されると解されています。)。

Q3 就業規則による退職制限に従わないといけないの?

Q 会社の就業規則に「退職する場合は3か月前に会社に申し出て会社の許可を得なければならない」と規定されています。従う必要がありますか。

A 必ずしも従う必要はありませんが、トラブルを避けるために早めに会社と話をつけましょう。

 民法627条1項の2週間の期間を就業規則で延長することはできないといわれています(>高野メリヤス事件)。辞職に会社の許可が必要とすることもできません。

Q4 退職願と退職届の違いは?

Q 退職願と退職届は何が違うんですか?

A 一般的に退職願は合意退職の意思表示に使うもので退職に会社の承諾が必要なもの、退職届は辞職の意思表示に使うもので退職に会社の承諾が不要なものです。

 もっとも、書面のタイトルよりも、中身が合意退職の「お願い」になっているか、辞職の「一方的通知」になっているかが重要です。

Q5 退職の理由を説明しないといけないの?

Q 会社に退職の理由を説明しないといけないのでしょうか。

A 退職の理由を伝える必要はありません。退職届に理由欄がある場合でも「一身上の都合」などと記載するのが一般的です。

Q6 使用者から損害賠償請求されたら?

Q 会社に退職したいと伝えたら、過去に私が仕事中のミスで壊してしまった備品を賠償しろと言われました。払わなければいけないのでしょうか。

A 原則として払う必要はありません。

 会社は労働者の仕事による利益を得ているので、労働者の仕事による損失だけを労働者に負担させることは公平の観点から原則許されません。会社が労働者に損害賠償請求できるのは、労働者が故意または故意と同視できるような重大な過失により会社に損害を与えたような場合に限られます。

Q7 研修費用の返還を求められたら?

Q 退職したいのですが、雇用契約書に「1年以内に退職する場合には会社が貸与した研修費用を返還する」と書かれています。返さないといけないのでしょうか。

A 返還合意が無効とされ、返さなくてよい可能性があります。

 労基法16条は、違約金または損害賠償額を予定する契約を禁止しています。退職したら研修費用を返還するという合意が、実質的に違約金または損害賠償額の予定に当たると評価できる場合には、返還合意は労基法16条に違反し無効となります。

Q8 有給休暇は消化できる?

Q 有給休暇が残っているのですが、退職前に消化することはできますか。

A できます。有給休暇とする日(退職日以前)を指定して有給休暇の申請をしましょう。

 有給休暇が2週間以上(厳密にいうと労働日の分だけで大丈夫です。)残っている場合には、2週間以上先の日を退職日として退職の通知をすると同時に、退職日までの有給休暇を申請することで、退職日まで出勤する必要がなくなります。

Q9 有給休暇は買い取ってもらえる?

Q 有給休暇の残日数を、退職時に会社に買い取ってもらうことはできますか。

A 法律上、有給休暇を買い取ってもらう権利は認められていません。退職前に休暇として消化しましょう。

 交渉により、会社が任意に買取りを行う場合もあります。

Q10 会社に行かずに退職できる?

Q 退職を通知してから2週間は会社に行かなければいけないのでしょうか。

A 有給休暇が余っている場合には、有給休暇を消化することで会社に行かずに退職することができます。退職の通知と同時に退職日までの有給休暇を申請しましょう。

 身体的、精神的に体調を崩してしまった場合には、退職日まで傷病休暇や私傷病欠勤とすることも考えられます。もっとも、会社の規則で有給の傷病休暇が認められていない場合、欠勤期間は無給になってしまいます。医師の診断書を提出し、無断欠勤にならないようにしましょう。

Q11 退職後に残業代を請求できる?

Q 会社から残業代が支払われていませんでした。退職した後でも会社に残業代を請求できますか。

A できます。2020年4月から残業代の時効が3年になったので、退職前3年分(ただし2020年4月以降のもの)の残業代を遡って請求することができます。

Q12 退職時の給料が支払われなかったら?

Q 会社に退職すると伝えたら、最後の給料を支払ってもらえませんでした。弁護士費用を払うと赤字になってしまいます。どうしたらいいでしょうか。

A 労働基準監督署に相談しましょう。賃金未払いは労基法違反に当たるので、労基署による行政指導等の対象になります。

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