Case397 産後休業中の労働者を退職扱いして育児休業の取得を妨げたことに対して雇用契約上の地位確認及び慰謝料200万円の慰謝料等を認めた事案・医療法人社団充友会事件・東京地判平29.12.22労判1188.56

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、被告法人が開設する歯科クリニックにおいて歯科衛生士として勤務していました。

 原告は、第1子を出産し、産後休業に入りました。その後まもなく、法人の理事長から原告に対して「復帰の時期は出産一年後」かというLINEがあり、原告は一年後復帰予定であると回答しました。

 ところがその直後、法人は原告に対して退職願を送付して提出を求めました。原告は、理事長に対してLINEで退職の意思がなく、育児休業を取得した後復職する意思があることを明示し、退職願の提出にも応じませんでした。

 ところが、理事長は、原告が産前休業の前から退職の意思表示をしていたかのように主張し、原告を自己都合退職扱いしました。

 本件は、原告が法人に対して、退職の意思表示はなかったとして、雇用契約上の地位の確認や損害賠償等を求めた事案です。

(判決の要旨)

1 退職の意思表示

 判決は、退職の意思表示は、労働者にとって生活の原資となる賃金の源たる職を失うという重大な効果をもたらす重要な意思表示であり、取り分け口頭又はこれに準じる挙動による場合は、退職の意思を確定的に表明する意思表示があったと認めることには慎重を期する必要があるとしました。また、退職の意思表示は書面で行うことが多いという慣行等から、書面が提出されていない事実は、具体的な事情によっては、退職の意思表示がなかったことを推測しうる事実であるとしました。

 特に、均等法、育介法は妊娠や出産、産前・産後の休業、育児休業の取得などを理由とする不利益な取扱いを禁じており、この不利益な取扱いには退職の強要が含まれ、真意に基づかない勧奨退職はこの退職の強要に該当するから、退職の意思表示があったこと、その意思表示が労働者の真意(自由な意思)に基づくことの認定は慎重に行うべきであるとしました。

 そのうえで、原告には退職の意思もそれを表示する言動もなく、理事長が原告に不快感を抱いて、原告を退職扱いにして事実上解雇し、原告が育児休業を書面で正式に申し出ることを妨げて、育児休業取得を拒否したというべきであるとし、地位確認を認めました。

2 損害賠償

 判決は、理事長が原告を退職扱いしたことが不法行為に該当するとし、法人もその責任を負うとしました。

 そして、本来得られたはずの育児休業給付金相当額の約163万円及び慰謝料200万、賞与の期待権侵害に対する慰謝料22万5000円の損害を認めました。

※確定

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