Case223 雇用調整助成金や臨時休車措置を利用せずに行われたタクシー運転手の整理解雇が解雇回避努力を怠ったものとして無効とされた事案・センバ流通(仮処分)事件・仙台地決令2.8.21労判1236.63

(事案の概要)

 被告会社は、新型コロナの影響によりタクシー利用客が激減したことから、令和2年4月30日付けでタクシー運転手である原告ら労働者を整理解雇しました。会社は雇用調整助成金を利用していませんでした。

 本件は、原告らが本件解雇の無効を主張し、労働契約上の地位保全や賃金仮払いを求めた仮処分の事案です。

(判決の要旨)

 本件は有期雇用契約の期間満了前の解雇の事案でしたが、判決は労契法17条の「やむを得ない事由」の判断を①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④手続きの相当性という整理解雇の4要素により行いました

 ①人員削減の必要性について、会社の収支及び資産状況に加え、新型コロナの影響によるタクシー利用客の減少がいつまで続くのか不明確な状況であった以上、本件解雇時において、人員削減の必要性があること及びその必要性が相応に緊急かつ高度のものであったことを認めつつも、給与手当等の削減の余地があったこと、債務超過の額の程度は大きくはないこと、融資を受けることが可能であったことなどの事情を総合すると、人員削減の必要性については、直ちに整理解雇を行わなければ倒産が必至であるほどに緊急かつ高度の必要性であったことは認められないとしました。

 ②解雇回避努力について、令和2年3月から4月中旬にかけて、厚生労働省や労働基準監督署、宮城県タクシー協会がホームページや説明会を利用して雇用調整助成金を利用した雇用の確保を推奨していたこと、東北運輸局がホームページを利用して臨時休車措置の利用を推奨していたこと、会社が令和2年4月20日から同月27日までの間、雇用調整助成金の利用を検討する旨の説明を従業員にしていたことに照らすと、会社は本件解雇に先立ち、これらの措置を利用することが強く要請されていたというべきであるとして、これらの措置を利用していないことから会社の解雇回避措置の相当性が低いとしました。

 ③人選の合理性、④手続きの相当性についても、相当性が低いとし、原告らに対する賃金仮払いを認めました。

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