Case233 解散した会社の下で発生した未払残業代債務について個人事業主として店舗の営業を継続した元代表取締役への承継を認めた事案・Aラーメン事件・仙台高判平20.7.25労判968.29
(事案の概要)
原告労働者は、平成16年9月に「Aラーメン」屋号のラーメン店を営むA社(被告が代表取締役)に雇用され、時間外労働をしていました。
A社は平成17年10月に解散しましたが、それ以降もAラーメンは、店舗や屋号、従業員等はそのままで、被告が個人事業主として経営していました。
本件は、原告が、A社の下で発生した未払残業代について、被告に支払いを求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、A社と被告との間には実質的同一性が認められ、A社の営業については実質的同一性を有する被告がこれを事実上包括的に承継したものというべきであるとしました。
そして、A社の解散の前後を通じ、原告を含む従業員の労働条件に何ら変化がなく、原告がA社から解雇通告を受けたりしておらず、被告との間で新たに雇用契約の締結もしていないという事情に照らせば、A社と被告との間で、事実上の営業の包括的承継に伴いA社と従業員との間の労働契約も承継することが黙示に合意されていたものと認められ、その際A社に生じた既発生の債務を除外したなどの特段の事情も認められないとし、A社の下で発生した未払残業代債務も被告が承継したとして原告の請求を認めました。
※確定