Case247 取締役が解雇を恐れる労働者の気持ちを利用して2年以上に渡り性的関係を持ったうえ解雇したことについて会社の使用者責任が認められた事案・ローカスト事件・東京高判令4.2.10

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、平成26年8月に被告会社の飲み会で酔いつぶれた後、気付いた時には社長の息子である被告取締役の自宅で被告取締役から意に反する性的暴行を受けていました。

 原告は、解雇を恐れて誰にも相談できなかったところ、被告取締役は2年以上に渡って原告を深夜まで連れまわし避妊せずに性行為に及ぶなどしていました。

 原告は、妊娠及び流産と思われる兆候を繰り返すなど体調を悪化させ、平成29年2月に被告取締役に反抗的な態度をみせたところ、被告取締役は、原告に対して、会社を辞めろ、荷物を無くしてくれ、死んでくれなどと申し向け、その後「死んだことが皆に分からないように死んでください。辞表も必要ありません。」などのLINEを送信しました。

 原告は、すぐに被告会社から私物を撤収し以後出勤しませんでした。

 本件は、原告が被告会社に解雇されたと主張し、地位確認等を認めるとともに、被告取締役の一連の行為について被告会社及び被告取締役に損害賠償請求するなどした事案です。

(判決の要旨)

1 解雇

 判決は、被告取締役に解雇の権限があったとしたうえ、被告取締役が原告に対して会社からいなくなるよう告げ、辞表は不要と告げたこと、原告が解雇されたものと認識して直ちに私物を撤去し以後出勤していないことなどから、被告取締役の発言は解雇の意思表示に当たるとしました。

 そして、解雇に合理的な理由はないことから、解雇を無効としました。

2 損害賠償請求

 判決は、被告取締役が平成26年8月に原告に性的暴行を加えたことは準強姦(当時)に当たる不法行為であることは明らかであるとしたうえ、これを含む被告取締役の原告に対する一連の行為は、原告が被告取締役の要求を拒否することが困難な状況にあることを利用して、原告の性的自由を侵害し、原告の意に反する行動を強要して健康を害させるとともに多大な精神的ダメージを負わせるなど人格権を侵害する違法なものというべきであって、不法行為を構成するとしました。

 また、被告取締役の不法行為は、被告会社における圧倒的な上下関係を利用してなされたものであり、平成26年8月の性的暴行が被告会社の飲み会の後に行われたものであることや、その後も被告会社の勤務後などに解雇を恐れる原告の気持ちを利用して性行為などに及んでいたことから、被告会社も使用者責任を負うとし、被告らに対して慰謝料400万円の支払いを命じました。

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