Case250 56時間ないし42時間分の固定残業代を導入する就業規則の変更が合理性を欠き無効とされた事案・インターメディア事件・東京地判令4.3.2

(事案の概要)

 被告会社は、就業規則を変更し、業務手当を56時間ないし42時間分の固定残業代として支払う旨の本件規定を導入するなどしました(本件変更)。

 これにより、原告労働者の給与は、基本給20万円とその他手当の合計24万5000から、基本給14万8800円、業務手当8万3000円、職務手当3万2000円の合計26万5000円となりました。

 本件は、原告が会社に対して、就業規則変更の無効を主張し、未払残業代等の支払いを求めた事案です。

 原告は、上司から頭に水をかけられ「次はお湯をかける」旨脅迫されたことについて、会社に損害賠償請求もしました。

(判決の要旨)

1 就業規則変更

⑴ 原告の同意

 就業規則変更を受け入れる旨の原告の行為が明確にされたとは認められず、変更による労働者の不利益の内容及び程度が重大であり、変更の内容について会社から十分な情報提供や説明もなされていないことから、本件変更について、原告の自由な意思に基づいて合意がされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできないとされました。

⑵ 就業規則変更の合理性

 判決は、本件変更の内容は、56時間ないし42時間もの長時間の時間外労働につき法の定める割増賃金を請求できなくなるという、必ずしも合理的とはいい難いものであり、不利益に対する代償措置も月額2万円程度の手取り給与の増額のみであって十分とは言い難いとしました。

 そして、不利益の程度が重いこと、変更の必要性に乏しいこと、十分な交渉が行われていないことなどの事情に照らして本件変更が合理的であるとはいえないとして、本件変更を無効としました。

2 損害賠償請求

 上司の行為は不法行為に当たり、会社は使用者責任を負うとして、慰謝料10万円が認められました。

 

Follow me!