Case254 育児休業を理由とする職能給の不支給及び昇格試験を受けさせなかったことが違法な不利益取扱いに当たるとした事案・医療法人稲門会(いわくら病院)事件・大阪高判平26.7.18労判1104.71

(事案の概要)

 被告法人では、定期昇給として本人給と職能給の昇給があるところ、育児休業規程において育児休業中は本人給のみの昇給とする旨定め、3か月以上の育児休業を取得した場合には、その翌年度の定期昇給において職能給の昇給を行わない運用をしていました。

 男性看護師である原告労働者は、3か月間の育児休業を取得したため、翌年度に職能給が昇給しませんでした。

 また、原告は育児休業により不就労期間が生じたことを理由に昇格試験の受験機会を与えられませんでした。

 本件は、原告が法人に対して、職能給の不昇給及び昇格試験を受けさせなかったことが育児介護休業法に違反する不利益取扱いにあたると主張して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、職能給の不昇給について、1年のうち4分の1にすぎない3か月の育児休業により、他の9か月の就労状況いかんにかかわらず、職能給を昇給させないというものであり、休業期間を超える期間を職能給昇給の審査対象から除外し、休業期間中の不就労の限度を超えて育児休業者に不利益を課すものであるとし、休業法10条に禁止する不利益取扱いに当たり、また公序に反し違法無効であるとし賃金差額の損害を認めました。

 昇格試験を受けさせなかったことも不法行為に当たるとして、慰謝料15万円を認めました。

※上告不受理により確定

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