Case255 前年度の一部期間に育児休業を取得したことを理由に定期昇給させなかったことが違法な不利益取扱いに当たるとされた事案・学校法人近畿大学(講師・昇給等)事件・大阪地判平31.4.24労判1202.39

(事案の概要)

 被告法人の給与規程は、前年度の12か月間勤務した職員は原則一律昇給する旨定めていました。

 原告労働者は、育児休業を取得したところ、前年度の一部休業していたことを理由に定期昇給がなされませんでした。

 本件は、原告が法人に対して、定期昇給がなされなかったことが育児介護休業法10条の不利益取扱いに当たるなどと主張して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、育児介護休業法は育児休業期間を出勤として取り扱うべきことまでも義務付けているわけではないとしました。

 もっとも、被告法人の定期昇給は、原則在籍年数により一律に実施されるいわゆる年功賃金的な考え方を原則としていることから、昇給基準日前の1年間のうち一部でも育児休業をした職員に対し、残りの期間の就労状況如何にかかわらず当該年度に係る昇給の機会を一切与えないことは定期昇給の趣旨とは整合しないとし、定期昇給日の前年度のうち一部の期間のみ育児休業をした職員に対して給与規程をそのまま適用して定期昇給させないこととする取扱いは、当該職員に対し、育児休業をしたことを理由に、当該休業期間に不就労であったことによる効果以上の不利益を与えるものであって、育児介護休業法10条の不利益な取扱いに該当するとし、差額賃金の損害を認めました。

※控訴

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