Case287 組合ウェブサイトへの記事の掲載が正当な組合活動であるとして、会社による削除請求が却下された事案・JMITU愛知支部ほか(オハラ樹脂工業・仮処分)事件・名古屋地決令4.11.10労判1277.37
(事案の概要)
本件は、会社が、組合のウェブサイトに掲載された各記事が会社の名誉・信用を毀損するとして、記事の削除を求めた仮処分の事案です。
(決定の要旨)
決定は、組合らの掲載した各記事が会社の名誉を毀損するものであっても、各記事の掲載は、労働組合の組合活動としての表現行為によるものであるから、表現行為によって摘示された事実または特定の事実を基礎とする意見ないし論評の表明については前提とする事実の重要部分が真実であるかまたは真実と信じるについて相当な理由があるか、表現自体の相当性、表現の目的および態様等の一切の事情を総合考慮し、正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものである場合には、違法性が阻却されるものと解するのが相当であるとしました。
また、本件は記事の削除を求めるものであるところ、上記判断にあたっては、労働組合の表現行為を直接的に規制するものであり、表現および組合活動への制約が大きいことをも考慮すべきであるとしました。
そして、各記事に摘示された事実及び意見の前提となった事実について、真実又は真実であると信じたことに相当な理由が認められるかを個々に判断したうえ、一部の事実については、真実又は真実であると信じたことについて相当な理由があるとまでは認められないとしました。
もっとも、本件各記事掲載前後の状況から、組合は、労使交渉が膠着する中で、広く世間に向けて、就労環境上の問題を訴え、支持を得ることにより、組合員の労働条件の向上、改善を目的として行ったものであり、組合活動として正当な目的であるといえること、現代社会において、労働組合がインターネット上での情宣活動を行うことの必要性は高いと認められ、一般的にも行われていることからすれば、表現の態様は労働組合として相当なものというべきであることなどから、なお正当な組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであり、仮処分手続において削除を認めるべき違法性を有するとはいえないとし、会社の申立てを却下しました。