Case309 屋外建設作業に従事する者との関係で国と建材メーカーの責任を否定した最高裁判例・建設アスベスト訴訟(京都)事件・最判令3.5.17労判1259.33
(事案の概要)
石綿(アスベスト)含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露したことにより石綿関連疾患(中皮腫等)を発症した建設作業従事者やその遺族が、国に対して、石綿粉じんにばく露することを防止するために労働安全衛生法(安衛法)に基づく規制権限を行使しなかったことの違法性を主張して国家賠償を求め、建材メーカーらに対して、石綿粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険がること等を表示せずに石綿含有建材を製造販売したことの違法性を主張して不法行為に基づく損害賠償を求めた集団訴訟の京都訴訟です。
最高裁では、主に屋外の建設現場において屋根工として従事した原告らの請求が争点となりました。
(判決の要旨)
控訴審判決
1 国の責任
大阪高裁は、国は平成14年1月1日には、屋外建設作業に従事する者が石綿関連疾患にり患することを防止するために、安衛法に基づく規制権限を行使して、石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として、石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険がある旨を表示すること等を義務付けるべきであったとし、屋外建設作業に従事する者との関係で、平成14年1月1日から平成16年9月30日までの国の権限不行使が国賠法上違法であるとしました。
2 建材メーカーの責任
大阪高裁は、屋外建設作業に使用される石綿含有建材のメーカーらについても、平成14年1月1日には、屋外建設作業に従事する者が石綿関連疾患にり患することを防止するため、上記石綿含有建材に、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿肺等の重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務を負っていたとして、建材メーカーの責任の責任を一部認めました。
最高裁判決
1 国の責任
最高裁は、当時公表されていた測定結果などから、国が平成13年から平成16年9月30日までの期間に、屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないとして、屋外建設作業に従事する者との関係では、国の規制権限不行使は国賠法上違法であるとはいえないとしました。
2 建材メーカーの責任
最高裁は、建材メーカーについても、平成13年から平成15年12月31日までの間に、屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないとして、責任を否定しました。