Case343 退職金債務について賃金債務と異なり使用者の営業所が義務履行地となる理由はないとして労働者の住所地に退職金請求権の管轄を認めた事案・栃木県厚生農業協同組合連合会事件・東京高決昭60.3.20東高民報36.3.40

(事案の概要)

 事案の詳細は不明ですが、おそらく退職した労働者から労働者の住所地を管轄する裁判所に退職金請求訴訟を提起された本件組合が、退職金債務の義務履行地は使用者の営業所であると主張して、営業所を管轄する裁判所への移送を申し立てた事案です。

 地裁が移送申し立てを却下したため、法人が即時抗告しました。

(決定の要旨)

 決定は、退職金が賃金の後払的性格を有するとしても、それは賃金債権のように雇用関係の存続を前提とするものではないから、その支払場所が、賃金債権の場合のように双方に都合の良い使用者の営業所であると解すべき合理的理由はなく、またそのような事実たる慣習があるものとも認め難く、その他これについて持参債務の原則の適用を排除すべき理由はないとして、労働者の住所地が義務履行地となることを前提に法人の申立てを退けました。

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