Case344 使用者が年金事務所等に対して過去の雇用関係の存在を否定していたことから過去の雇用関係の存在について確認の利益が認められた事案・医療法人社団創恵会事件・東京地判平28.8.30労判1157.83

(事案の概要)

 原告労働者ら4名は、過去に被告法人に雇用されていましたが、法人がハローワークや年金事務所に対して原告らとの過去の雇用関係の存在を否定し、既払いの保険料の還付手続きを申し立てるなどしていました。

 本件は、原告らが、法人に対して、過去の期間に雇用関係が存在したことの確認を求めた事案です。

 訴訟では原則として過去の権利関係の確認請求は訴えの利益がないとして認められないため、訴えの利益の有無が争点となりました。

(判決の要旨)

 判決は、法人がハローワークや年金事務所に対して原告らとの過去の雇用関係の存在を否定し、既払いの保険料の還付手続きを申し立てるなど、法人との関係で紛争が生じているのみならず、関係各機関との間でも社会保険の給付関係等で将来的に不利益を受けるおそれが生じているところ、これらの問題を抜本的有効に解決するには、原告らと法人との間で雇用関係が存在したことの確認を求めるほかに有効適切な方法は見当たらないとしました。

 また、法人との関係で雇用関係を確認しても第三者にその判決が拡張されるものではないが、判決での確認が国その他の利害関係者との関係でも事実上の行動準則になり、紛争が統一的に解決される可能性が期待できるとし、確認の利益を認め、原告らの請求を認容しました。

※確定

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