Case351 組合員であることを理由とする採用拒否は特別の事情がない限り不利益取扱いの不当労働行為に当たらないとした最高裁判例・JR北海道・JR貨物事件・最判平15.12.22民集57.11.2335【百選10版103】

(事案の概要)

 不当労働行為救済命令に対して、原告会社らが提起した取消訴訟です。

 国鉄民営化により国鉄事業を原告会社らJR各社(承継法人)が承継するにあたり、JR各社の職員の採用は、日本国有鉄道改革法(改革法)に基づき、①承継法人の設立委員が採用基準等を示して国鉄を通じて募集を行い、②この基準に基づいて国鉄が採用候補者名簿を作成し、③この名簿に記載された職員から設立委員が承継法人の職員として採用する者を選出するという手順で行われました。

 承継法人は、国鉄が提出した名簿に記載された職員全員を採用しましたが(4月採用)、名簿記載者の割合は、所属する労働組合によって差がありました。

 その後、原告会社に欠員が生じたため、追加採用を行いましたが(6月採用)、ここでも所属する労働組合によって差がありました。

 採用率が低かった労働組合が、4月採用及び6月採用に際し組合員が採用されなかったことが不当労働行為に当たるとして労働委員会に救済命令申立てをしたところ、地方労働委員会及び中央労働委員会は不当労働行為を認め、選考のやり直し等の救済命令を発していました。

(判決の要旨)

 最高裁は、以下のとおり承継法人による不当労働行為を否定し救済命令を取り消しました。

1 4月採用(承継法人が労組法の使用者に当たるか)

 改革法は、国鉄が採用者名簿の作成に当たり組合差別をした場合には、もっぱら国鉄が労組法上の使用者として責任を負わせることとしたものであるとして、承継法人は労組法上の使用者に当たらないとしました。

2 6月採用(採用拒否が不利益取扱に当たるか)

 また、6月採用において承継法人が行った採用拒否について、企業には採用の自由があり、労組法7条1号本文は雇入れにおける差別的取扱いを規制対象とすることを明示的に規定して雇入れ段階と雇入れ後の段階とに区別を設けているとして、採用拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特別の事情がない限り、不利益取扱いに当たらないとして、6月採用における採用拒否は不当労働行為に当たらないとしました。

学説からの批判の多い判決です。

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