Case372 発症と悪化で形式的に異なる基準を用いるべきではないとして精神障害の発症時点では業務起因性が認められなかったものの悪化時点で業務起因性が認められた事案・国・北九州東労基署長(TOTOインフォム)事件・福岡地判令4.3.18労判1286.38

(事案の概要)

 労災不支給決定に対する取消訴訟です。

 原告は、業務内容や業務量の変化や、上司に当たるAから厳しく指導を受けるなどし、平成23年4月にうつ病などと診断され(本件発症)、休業しましたが、同年7月に復職しました。

 平成26年8月から、原告はAがリーダーを務めるプロジェクトに参加することになりました。原告がAの直属の部下となるような異動は行わず、原告とAが対面でやり取りする機会を作らないようにする配慮はなされましたが、会議の場で原告がAから直接指摘を受けることや、原告とAが直接メールのやり取りをすることがありました。

 また、平成27年3月頃、原告は元々2名体制で行っていた業務を1人で行うようになり、15日間の連続勤務をし、月の時間外労働時間数は100時間に達しました。

 原告は、以上により体調を悪化させ平成27年4月に再びうつ病などと診断されました(本件悪化)。

(判決の要旨)

1 本件発症の業務起因性

 判決は、本件発症前の出来事については、いずれも心理的負荷は「弱」か「中」にとどまるとして本件発症の業務起因性をひていしました。

2 本件悪化の業務起因性

 判決は、いったん業務外の要因により精神障害を発病した労働者がその後精神障害を発病ないし悪化した事案の相当因果関係の判断について、後者の発病ないし悪化の時点で前者の発病が寛解に至っていたか否かで形式的に異なった基準を適用するのではなく、発病ないし悪化時点での当該労働者の具体的な病状の推移、個別具体的な出来事の内容等を総合考慮したうえで、業務による心理的負荷が、平均的労働者を基準として、社会通念上客観的にみて、精神障害を発症させる程度に強度であるといえ、業務に内在する危険が現実化したと認められる場合には、当該発病ないし悪化についても業務との相当因果関係を認めて差し支えないとしました。

 そして、本件悪化前の出来事について「仕事内容・仕事量の変化を生じさせる出来事があった」「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」に該当しその心理的負荷は「強」であるとしました。

 また、本件悪化前はAから強い指導を受けたといった事情は認められないものの、かつてトラブルのあった上司から再び指導等を受けることは、それ自体一定の心理的負荷を生じさせる出来事であるとして、かかる事情は「上司とのトラブルがあった」に類する出来事として心理的負荷を「弱」ないし「中」と評価すべきとしました。

 以上を総合考慮して、本件悪化の業務起因性を認め、労災不支給決定を取り消しました。

※確定

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