Case375 能力等の判断に必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し無効であるとした事案・ブラザー工業事件・名古屋地判昭59.3.23労判439.64

(事案の概要)

 本件会社では、中途採用者を「見習社員」として、雇用期間は原則として2か月で、見習社員が「試用社員登用試験」に合格して「試用社員」になるか、試験に3回不合格になって雇止めされるまでの間、期間満了毎に自動的に雇用契約が更新されることになっていました。また、試用社員になってから6か月後に行われる「社員登用試験」に合格すれば正社員になり、試験に3回不合格になると解雇されることになっていました。

 本件労働者は、見習社員として雇用され、2回目の試験で試用社員になりましたが、社員登用試験に3回不合格となったため、入社から2年後に解雇されました。

 本件は、労働者が会社に対して、2年間も試用期間のような扱いをするのは公序良俗に反し解雇は無効であるとして、賃金仮払い等を求めた仮処分の事案です。

(判決の要旨)

 判決は、試用期間中の労働者は不安定な地位に置かれるものであるから、労働者の労働能力や勤務態度等についての価値判断を行うのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、その限りにおいて無効であるとしました。

 そして、会社の「見習社員」期間は試用期間に該当し、これに加えて、さらに「試用社員」としての期間を付加することは公序良俗に反して許されず、本件労働者は試用社員登用試験に合格した段階で本採用されたものと解すべきであるとしたうえ、本件解雇を権利濫用として無効としました。

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