Case379 料理長の手待ち時間が労働時間に当たるとされ36協定がないことや実態と乖離していることから職務手当が対価性を欠き固定残業代に当たらないとされた事案・サン・サービス事件・名古屋高判令2.2.27労判1224.42

(事案の概要)

 原告労働者は、被告会社の経営するホテルの飲食店で料理長として働いていました。会社作成の労働条件提案書には勤務時間として「6時30分~22時」「休憩時間は現場内で調整してください」と記載されていましたが、休憩時間の調整は行われていませんでした。また、職務手当13万円を深夜・残業手当とみなすとされていました。

 休憩時間を含む原告の労働時間はタイムカードで管理されていましたが、原告が休憩の打刻をしたのは5日間だけで、その他は休憩時間の打刻がありませんでした。

 就労実態として、原告は、料理長としての仕事のみならず、ホテルのフロント業務の一部や客の送迎も行っていました。

 本件は、原告が会社に対して、休憩の打刻のある日を除き、始業から終業まで全て労働時間であるとして残業代請求した事案です。

(判決の要旨)

1 労働時間

 判決は、原告の就労実態や、従業員の休憩施設がないことなどから、原告が調理等に従事していない時間があったとしても、それは勤務から完全に解放された休憩時間ではなく、手待ちの時間であるとして、タイムカードに打刻のある休憩時間を除きすべて労働時間に当たるとしました。

2 通勤手当

 原告の通勤手当は1日625円(最高額1万5000円)と定められていたところ、実際の通勤距離や通勤に要する実際費用に応じて定められたものと認められず、労基法37条5項の除外賃金には当たらないとして、通勤手当も残業代の基礎賃金に含まれるとしました。

3 固定残業代

 判決は、手当が時間外労働等に対する対価として支払われているか否かは、雇用契約にかかる契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきであるとしました。

 そのうえ、判決は、会社が原告の勤務時間管理を適切に行っていなかったと指摘しました。

 また、職務手当は月約80時間分の割増賃金に相当するところ、原告の残業時間はほぼ毎月120時間を超えていたとして、仮に職務手当を固定残業代とみた場合に相当する時間数と実際の時間外労働時間等とが大きくかい離しているとしました。

 さらに、事業場で36協定が締結されておらず、時間外労働等を命じる根拠を欠いていたとしました。

 これらの事情から、職務手当は固定残業代に当たらないとしました。

※確定

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