Case400 初めて整理解雇の4要件(要素)を明示して繊維不況を理由とした裁断縫製工の整理解雇を無効とした事案・大村野上事件・長崎地大村支判昭50.12.24労判242.14
(事案の概要)
地位保全仮処分の事件です。
本件会社は、昭和49年半ばから始まった繊維不況に伴う受注減を理由として、パジャマの裁断縫製工である本件労働者を含む29名を整理解雇しました。
(判決の要旨)
判決は、整理解雇が権利濫用となるか否かは、①当該解雇を行わなければ企業の維持存続が危殆に瀕する程度にさし迫った必要性があるか、②配置転換や一時帰休、希望退職者の募集等、労働者にとって解雇よりもより苦痛の少ない方策によって余剰労働力を吸収する努力がなされたか、③労働組合ないし労働者(代表)に対し事態を説明して了解を求め、人員整理の時期、規模、方法等について労働者側の納得が得られるよう努力したか、④整理基準およびそれに基づく人選の仕方が客観的・合理的なものであるか、の諸点を考慮して決定すべきとしていわゆる整理解雇の4要件(4要素)を初めて明示しました。
①本件では一体何名の人員整理が本当に必要だったのか明らかでなく、本件解雇後に人手不足となり求人募集をしていることなどから、上記必要性は認められないとしました。
また、②会社は、希望退職者の募集など解雇以外の方法を検討せずに指名解雇の方針を固執したとしました。
さらに、③会社は本件解雇当日の朝礼で初めて不況により人員整理を行わざるを得ない旨を簡単に説明したのみであったとしました。
このように、本件整理解雇は、極めてずさんな人員計画から安易に指名解雇という結論を導いたものであって、解雇権の濫用として無効であるとし、雇用契約上の地位を仮に認めました。
※①人員削減の必要性については近年緩やかに解する傾向にあります。