Case420 解雇が妊娠等に近接して行われかつ客観的合理的理由を欠くことなどを当然に認識すべき場合には解雇は均等法等ないしその趣旨に反するとされた事案・シュプリンガー・ジャパン事件・東京地判平29.7.3労判1178.70
(事案の概要)
原告労働者(女性)は、第2子出産のための産前産後休暇及び育児休業を取得しました。原告が被告会社に対して職場復帰を申し入れたところ、会社は、従前の部署は人員が足りており現職復帰は難しく、インドの子会社に転籍するか、収入が大幅に下がる異動を受けるしかないとして原告に退職勧奨をし、原告の就労を拒否しました。
半年以上経って、会社は原告を協調性不足や指揮命令違反等を理由に解雇しました。
本件は、原告が会社に対して、本件解雇は産前産後休暇及び育児休業を取得したことを理由とする解雇であり均等法9条3項及び育休法10条に違反し無効であると主張して、雇用契約上の地位の確認及び慰謝料の支払い等を求めた事案です。
(判決の要旨)
判決は、事業主が解雇をするに際し、形式上、妊娠等以外の理由を示しさえすれば、均等法および育休法の保護が及ばないとしたのでは、当該規程の実質的な意義は大きく削がれることになること等からすれば、事業主において外形上、妊娠等以外の解雇事由を主張しているが、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないことを認識しており、あるいはこれを当然に認識すべき場合において、妊娠等と近接して解雇が行われたときは、均等法9条3項および育休法10条と実質的に同一の規範に違反したものとみることができるから、このような解雇は、これらの各規定に反しており、少なくともその趣旨に反した違法なものと解するのが相当であるとしました。
そして、本件解雇は妊娠等に近接して行われており、かつ、客観的に合理的な理由を欠いており、社会通念上相当であるとは認められないことを少なくとも当然に認識するべきであったとして、均等法9条3項および育休法10条に違反し、少なくともその趣旨に反したものであるとして、本件解雇を無効とし、雇用契約上の地位の確認及び慰謝料50万円を認めました。
※控訴