Case422 違法なセクハラの判断基準を示して家政婦が社長から受けた強制わいせつ行為を含むセクハラ及び殴打を違法とした事案・金沢セクシュアル・ハラスメント事件・名古屋高金沢支判H8.10.30労判707.37

(事案の概要)

 原告労働者(女性)は、家政婦として被告会社の被告社長(男性)の昼食と夕食の支度、洗濯・部屋の片づけや庭の手入れ、電話番、郵便物を営業所に持っていく業務を行っていました。

 社長は原告に対して、飲酒の上猥談をし、その後原告の体に触れたり、胸を触ろうとし、抱きつくようにしたり、首筋に口をもってくるなどの行為をしました。その後も、性交渉を求めたり、入浴時に背中を洗ってほしいなどということがあり、原告のスラックスに手をかけて下着もろとも太股までずらせ体を押し重ねてきたこともありました(原告の抵抗により未遂に終わりました。)。

 原告と社長の関係は悪化し、社長の注意に対して原告が「これもセクハラの一環」と言ったことに対して社長が激高して平手で原告の頬を殴打することもありました。

 本件は、原告が会社と社長に対して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、被害女性の年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となるとしました。

 そして、社長の行為は強制猥褻行為を含み原告の人格の尊厳性を損なうもので違法であるとしました。

 また、殴打は理由が何であれそれ自体違法な行為であるとしました。

 以上より、被告らに対して慰謝料120万円の支払いを命じました。

※上告棄却により確定

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