Case433 労働者の排便障害に対する勤務配慮が労働条件として会社分割の承継会社に承継されるとした事案・阪神バス(勤務配慮・本訴)事件・神戸地尼崎支判平26.4.22・労判1096.44

(事案の概要)

 バス運転手である原告労働者は、A社を休職して腰椎椎間板ヘルニアの手術を受けましたが、腰椎由来の神経障害により排尿・排便が困難となる障害が残りました。原告の復職にあたり、原告とA社は、原告には午後の比較的遅い時間からの勤務シフトばかりを担当させる勤務配慮を行うことを合意しました。

 その後、会社分割により被告会社がA社の事業を承継しましたが、被告会社は原告を含むA社従業員との労働契約を承継せず、A社従業員はA社を任意退職し、被告会社に転籍するという処理をしました。その際、被告会社は原告に対する勤務配慮をしないこととされました。

 原告は、転籍当初はA社時代と同様の勤務配慮を受けていましたが、被告会社は原告に勤務配慮を行わなくなりました。

 本件は、原告が被告会社に対して、勤務配慮によらない勤務シフトによって勤務する義務のないことの確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、原告に対する勤務配慮は、原告とA社との間の労働契約における労働条件として黙示的に合意されていたとしました。

 そして、会社分割が行われる場合における労働契約の承継等について定める労働契約承継法の各規定に照らせば、承継会社に承継される事業に主として従事する労働者には、会社分割に当たり、当該労働者が希望しさえすれば、分割会社との間で従前の労働条件がそのまま承継会社に承継されることが保障されているとし、A社を任意退職し被告会社に転籍するという手続きを公序良俗違反により無効とし、原告とA社の労働契約はそのまま被告会社に承継されるとし、同意による不利益変更も公序良俗に反し無効としました。

 判決は、被告会社に対して原告に対して勤務配慮をした勤務を担当させることを命じ、原告がこれ以外の勤務シフトによって勤務する義務がないことを確認しました。

※控訴

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