Case432 難病の重症筋無力症と診断されたことを理由に正社員からパート社員に身分変更する処分が無効とされた事案・ケントク(仮処分)事件・大阪地決平21.5.15労判989.70

(事案の概要)

 本件労働者は、正社員で、飲食店の店主代行として勤務していましたが、難病の重症筋無力症と診断されました。本件会社は、本件労働者に対して、正社員から契約期間1年のパートタイマー従業員に身分変更し、週2日、1日5時間勤務とする旨を告げました。労働者はこれに応じられない旨応答しましたが、会社は週3日勤務とするほかは上記と同じ内容の労働条件変更を強行しました。

 会社の就業規則には、「心身上の理由があり会社が一定の保護を必要と認めた働きさん(※会社は「従業員」を「働きさん」と呼んでいました。)」に対して職種変更など必要な措置をとることができる旨定められていました。

 本件は、労働者が会社に対して、正社員たる労働契約上の仮の地位や賃金仮払いを求めた仮処分の事案です。

(決定の要旨)

 決定は、労働者が通常の勤務時間に会社の業務に従事することは可能であり、就業規則の「心身上の理由」が認められないとして、本件変更を無効とし、賃金の一部仮払いのみ認めました。

 会社は、悪化の可能性を指摘しましたが、裁判所は、その危険は、生身の人間を雇用する使用者として甘受すべき危険の程度を超えるものとはいえず、業務中、突発的な事故を起こす可能性は低いとしました。

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