Case437 大阪市によるアンケート調査を争う別件訴訟の提起を契機とするバス運転手から運輸課への転任命令が取り消された事案・大阪市・市交通局長(転任)事件・大阪高判平27.6.18労判1122.18

(事案の概要)

 原告労働者は、被告大阪市において約20年間にわたりバスの運転手をしていました。大阪市長は、平成24年に職員の政治活動及び組合活動に関するアンケート調査を実施しました(後に不当労働行為と認定されています)。また、同年、大阪市長は職員に対して入れ墨の有無等に関するアンケート調査も命じましたが、原告がこれに回答しないことを理由に原告を戒告処分としました。

 原告は、政治活動及び組合かつ同に関するアンケートや入れ墨の有無等に関するアンケート調査が違憲・違法であるとして、戒告処分の取消しや慰謝料を求める別件訴訟を提起しました。

 その2日後、原告は市内出張として運輸課での勤務を命じられ、その後正式に運輸課への転任命令を受け、デスクワークに従事させられました。

 本件は、原告が大阪市に対して転任命令の取消等を求めた事案です。

(判決の要旨)

 取消しの利益が認められるためには処分の不利益性が必要であるところ、判決は、転任命令時54歳になる原告にとって、バス運転手と比べて運輸課での業務は相当の差異があることからすれば、その職務内容の変更は異動に伴い当然に甘受すべきであるとか事実上の不利益にとどまるとはいえないとして、不利益性を認め、取消しの利益を認めました。

 そのうえで、転任命令の内容、同命令に至る経緯、特に職務上ないし人事上の必要性、合理性が特段認められない中で、別件訴訟への対抗措置として転任命令が行われたこと、超過勤務手当の減額、原告の経歴等を考慮し、転任命令の取消し及び慰謝料100万円を認めました。

※上告棄却等により確定

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