Case467 賃金規程に降給を予定した規定がないとして勤務不良を理由とした一方的な賃金減額を無効とし休業損害等の損害賠償請求も認めた事案・システムディほか事件・東京高判平30.12.19

(事案の概要)

 被告会社で勤務する原告労働者の賃金は、月37万6500円(基準給23万、能力給3万2000円、裁量労働手当5万7500円、技能手当2万7000円、住宅手当3万)でした。

 会社は、原告の賃金を、月22万3000円(基準給15万2000円、能力給0円、裁量労働手当3万8000円、技能手当3000円、住宅手当3万)に減額しました。これに伴い賞与も減額されました。

 会社の賃金規程では、賃金減額は予定されていませんでした。

 被告社長らは、原告との面談において原告に対して「裏切り」「寄生虫」などと発言し退職勧奨することがありました。

 原告は、一方的に賃金を減額されたことにより、うつ状態となり会社を休職しました。

 原告は、1年6か月の休職期間満了前に会社に対して復職を申し入れましたが、会社は原告が休職期間満了により退職になったと通知しました。その後原告と会社で協議が行われ、会社は保証人と連名の誓約書の提出を条件に復職日を指定しました。しかし、原告が保証人の署名のない誓約書を提出したため、会社は復職を不可としました。

 その後、原告が賃金仮払いの仮処分を申し立て、その中で会社と復職合意をして、原告は会社に復職しました。

 本件は、原告が会社に対して、①給与減額の無効を主張し差額賃金の請求、②復職拒否後の賃金請求、会社及び社長に対して③休業損害や慰謝料の損害賠償請求をした事案です。

(判決の要旨)

1 賃金減額について

 判決は、賃金は労働契約の中で最も重要な労働条件であるから、使用者が労働者に対してその業務成果の不良等を理由として労働者の承諾なく賃金を減額する場合、その法的根拠が就業規則にあるというためには、就業規則においてあらかじめ減額の事由、その方法及び程度等につき具体的かつ明確な基準が定められていることが必要であるとしました。

 そして、会社の賃金規程にはそもそも賃金減額を予定した規定がないとして、賃金減額を無効とし、差額賃金及び基準求を元に算定された一部差額賞与の支払いを認めました。

2 復職拒否について

 判決は、会社が原告に指定した復職日以降は、会社は原告を復職させる条件を整えることができたにもかかわらず、原告に保証人と連名の誓約書を求めるなどおよそ原告が応じる義務がなく内容自体不当な要求をしており、会社の責めに帰すべき事由により原告の労務の提供を拒絶していたとして民法536条2項に基づき復職までの間の賃金請求を認めました。

3 損害賠償請求について

 判決は、社長らの不当な言動や一方的な賃金減額によって原告がうつ状態を発症したとして、会社に対して休業損害や、慰謝料80万円の支払いを命じました。

 また、社長が「裏切り」「寄生虫」などと断じて原告を侮辱したことについて、会社及び社長に対して慰謝料20万円の支払いを命じました。

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