Case472 建材メーカーの責任について所謂シェア論による立証手法を否定した高裁判決を破棄して原審に差し戻した最高裁判例・建設アスベスト訴訟(東京)事件・最判令3.5.17労判1299.5

(事案の概要)

石綿(アスベスト)含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露したことにより石綿関連疾患(中皮腫等)を発症した建設作業従事者やその遺族が、国に対して、石綿粉じんにばく露することを防止するために労働安全衛生法(安衛法)に基づく規制権限を行使しなかったことの違法性を主張して国家賠償を求め、建材メーカーらに対して、石綿粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険がること等を表示せずに石綿含有建材を製造販売したことの違法性を主張して不法行為に基づく損害賠償を求めた集団訴訟の首都圏訴訟です。

(判決の要旨)

控訴審判決

 東京高裁は、国が遅くとも昭和50年10月1日以降、平成16年9月30日までの間に安衛法上の規制権限を行使しなかったことにつき、国賠法上違法であるとし、労災特別加入制度への加入資格を有する一人親方等の関係でも、警告表示の義務付け等にかかる規制権限の不行使が違法となるとしました。

 一方で、建材メーカーらの責任については、原告らが主張した、石綿含有建材のうち、同種の建材の中での市場占有率(シェア)が概ね10%以上であるものは、被災者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いという立証手法(本件立証手法)では被告メーカーらの建材が建設現場に到達した事実は立証できないとして、被告メーカーらの責任を否定しました。

最高裁判決

 最高裁は、建材メーカーらの責任について、本件立証手法は相応の合理性を有し、これにより特定の石綿含有建材について建材現場到達事実が立証されることはあり得るとして、本件立証手法により建材到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には経験則又は採証法則に反する違法があるとして、原判決を破棄し、高裁に差し戻しました。

※差戻審は令和5年10月9日に結審し和解勧試がされています。

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