Case477 少数の労組法適用職員を有する混合組合の不当労働行為救済申立適格を認め団交拒否や組合事務所退去要請の支配介入を認めた事案・大阪府・府労委(枚方市)事件・大阪高判令5.6.16

(事案の概要)

 労働委員会の不当労働行為救済命令に対して、枚方市が取消訴訟を提起した事案です。

 本件労働組合は、枚方市の職員で構成される地方公務員法の職員団体ですが、労働組合法が適用される現業職員も全体の2割程度所属していました。

 組合は昭和46年から組合事務所として枚方市の管理する本件施設を貸与されており、平成18年以降は毎年度使用許可を得ていたところ、平成28年度の使用許可から、「目的外使用があったと認められるときは許可の取消しまたは変更がある」とするそれまでなかった条件が付されました。

 平成30年12月、枚方市は組合に対して、組合ニュースで政権や特定政党への批判を繰り返していることから使用許可を取り消すことになるため自主的に退去するよう通知しました。

 組合は、枚方市に対して、それまでなかった許可条件が付された理由と経緯やどの行為が許可条件に反するのか等について説明を求める団体交渉を申し入れましたが、枚方市は地方公務員法の趣旨に照らして応じられないとして団体交渉を拒否しました。

 組合が、団体交渉拒否及び組合事務所から退去を求める支配介入が不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に対して救済命令申立てをしたところ、府労委は団体交渉及び支配介入の不当労働行為を認め救済命令を発しました。

 枚方市は、組合の構成員の大半は労組法が適用されない一般職地方公務員であることや、管理的地位にある課長代理が加入していること、専ら政治活動を目的としていることから、組合には救済命令の申立人適格がないと主張しました。

(判決の要旨)

一審判決・大阪地判令4.9.7労判1300.58

1 申立人適格

 大阪地裁は、いわゆる混合組合である本件組合について、地方公務員法55条7項の管理運営事項であれば団体交渉を打ち切ることができることを踏まえると、労組法の適用を認めたとしても地公法の意味を失わせることになるとはいえないうえ、労組法適用職員が少数であったとしても不当労働行為救済制度による救済等が及ばなくなることは相当とはいえず、組合員の構成比率で不当労働行為救済制度に関与できる地位の存否が左右されることは法的安定性や手続的明確性の観点からも疑義があるとして、組合に救済命令の申立人適格があるとしました。

 枚方市が主張するその他の理由も否定しました。

2 団交拒否

 便宜供与に関する団体交渉申入れは義務的団体交渉事項に当たるところ、組合の要求は説明や協議を求めるもので目的外使用許可の取消しなどの行政処分の撤回自体を求めるものではないから、枚方市の団交拒否に正当な理由はなく不当労働行為に該当するとしました。

3 支配介入

 組合が表現の自由の範囲において一定の政治的意見を表明することがまったく許容されないわけではなく、それがニュースに占める割合が必ずしも大きくないこと、組合事務所の明渡しは組合活動に与える影響がきわめて大きく、その活動に直接的な支障を生じさせるおそれがあることに鑑みれば、組合事務所退去による不利益を与えてもなお明渡しを求めざるを得ない相当な理由があったとはいいがたく、手続的配慮もきわめて不十分であったこと等からすると、組合事務所退去を求めた枚方市の行為は支配介入の不当労働行為に当たるとしました。

控訴審判決

 高裁も一審判決を維持しました。

Follow me!