Case511 上司による「主任失格」などの叱責や結婚指輪を外せとの命令がパワハラに当たるとしてうつ病発症及び自殺の業務起因性が認められた事案・名古屋南労基署長(中部電力)事件・名古屋高判平19.10.31労判954.31

(事案の概要)

 労災不支給決定に対する取消訴訟です。

 本件労働者は、平成11年8月に所属する環境整備課の主任(管理職ではないが、一般職の最高職)に昇格しました。

 本件労働者の上司であるAは、本件労働者に対して、「主任失格」「お前なんか、いてもいなくても同じだ。」などと感情的に叱責したり、結婚指輪を身に着けることが仕事に対する集中力低下の原因となるという独自の理解に基づいて、原告に対して複数回に渡って結婚指輪を外すように命令しました。

 本件労働者は、同年9月下旬頃にうつ病を発症し、同年11月に焼身自殺しました。

 本件労働者の妻である原告は、労基署に遺族補償年金等の支給を請求しましたが、不支給とされました。

(判決の要旨)

 判決は、Aの原告に対する叱責や結婚指輪を外せという命令は、何ら合理性のない、単なる厳しい指導の範疇を超えた、いわゆるパワーハラスメントとも評価されるべきものであり、一般的に相当程度心理的負荷の強い出来事と評価すべきであるとし、叱責や指輪を外すよう命じられたことは1回限りのものではなく、主任昇格後から本件労働者が死亡する直前まで継続して行われていたと認められ、うつ病発症前、また死亡直前に、本件労働者に大きな心理的負荷を与えたとしました。

 これに、主任昇格自体の心理的負荷や、担当業務の質的・量的加重性(本件労働者の8月、9月の時間外労働時間数は約90時間)もあわせて考慮し、業務とうつ病発症との間の相当因果関係、うつ病発症と自殺との間の相当因果関係を認め、労災不支給決定を取り消しました。

※確定

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