Case522 登録型派遣契約の解雇についても一般の解雇と何ら異なるものではないとして期間途中の整理解雇を無効とした事案・アウトソーシング事件・津地判平22.11.5労判1016.5
(事案の概要)
本件は、平成19年12月3日に派遣元である本件使用者との間で有期の登録型派遣労働契約を締結し、最終の雇用期間は平成21年3月31日までであった本件労働者に対して、新規派遣先を紹介するのが困難であるとして平成20年12月27日付けでなされた解雇の有効性が問題となった事案です。
(判決の要旨)
⑴ 概要
判決は、登録型派遣労働契約の場合であっても、事業者間の派遣契約と、派遣労働者と派遣元との間の労働契約である派遣労働契約は別個の契約であり、派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約も労働契約の一形態であるから、その労働条件は、労働契約の内容によって定まることは明らかであり、解雇の場合も同様であるといえるとし、登録型派遣契約の解雇についても、一般の労働契約の場合と何ら異なるものではなく、当該労働者に関する派遣契約の終了が当然に派遣労働契約の終了事由となると解するべきではないとしました。
判決は、以下の事情を総合すると、本件使用者において、整理解雇の要件についてやむを得ない事由があると認められる程度にまで果たしたとはいえず、本件解雇は、やむを得ない事由があるとは認められないとしました。
⑵ 人員削減の必要性
判決は、本件使用者が本件労働者を解雇した平成20年12月当時、本件使用者の派遣先である製造業及び本件使用者を含む人材派遣業の業界全体が不況に見舞われ、本件使用者においても、本件労働者の派遣先であるシャープや他の派遣先との間の派遣契約を打ち切られるなど経営的に厳しい状況があったものの、他方で、本件解雇前後を通じて本件使用者の経営状態は健全であったと認められ、本件解雇は未だ余力を残した予防的措置と評価されるのであって、必要性の程度は、やむを得ずにしたというものとはいえないとしました。
⑶ 解雇回避努力
判決は、本件使用者は、本件労働者を含む派遣労働者に対し、新規派遣先を確保することがほぼできなかったことから自主退職を勧めることを基本とし、シャープに派遣されていた17名のうち本件労働者を除く16名については自主退職に応じたが、自主退職に応じなかった本件労働者に対しては、もともと本件労働者の希望する条件とは合わなかった1社についてのみ新たな派遣先として打診したが、これが不調になるや新規派遣先の紹介を断念し、シャープとの間の派遣契約解除日と同日に解雇に踏み切ったのであり、解雇回避努力義務を尽くし切ったといえるかについては疑問が残るといわざるを得ないとしました。
⑷ 人選の合理性
本件労働者のように期間満了前の有期雇用労働者に対する自主退職や解雇を打診したことは認められるものの、他の労働契約の形態の従業員については特段解雇を打診した事実は窺われない。その上、期間の定めのない雇用契約の従業員と比べて期間の定めのある雇用契約の従業員を期間満了前に解雇すベき合理性についても、これを認めるに足りる事情や証拠はないといわざるを得ないとしました。
⑸ 手続の相当性
本件使用者は、新規派遣先を紹介したいけれども、紹介できるところはないなどと説明したのみで、本件労働者を解雇するに当たって、派遣労働者を削減する必要があるとする経営上の理由や解雇した後の処遇など十分説明し尽くしたとまではいえず、解雇手続について十分協議したなどの事情も認められないとしました。
※解雇