Case526 二度に渡る賃金減額を伴う職位の引下げとしての降格を無効とし第一降格の直後に行われた第二降格は不法行為にも当たるとされた事案・シーエーシー事件・東京高判令4.1.27労判1307.51
(事案の概要)
原告労働者は、被告会社と期間の定めのない雇用契約を締結し、平成27年12月当時サービスプロデューサーの地位にありました。原告の月額賃金は、職責給53万200円および役職給7万円でした。役職給の金額については、就業規則に定められていませんでした。
原告は、平成28年1月にチーフプロジェクトマネージャーに降格され(第一降格)、これにより役職給が7万円から3万5000円に減額されました。また、同年2月には、役職がない者に降格され(第二降格)、役職給が0円に減額されました。
本件は、原告が会社に対して、各降格の無効を主張し差額賃金及び慰謝料の支払を求めた事案です。
なお、原告はその後の退職が会社都合に当たると主張しましたが、否定されています。
(判決の要旨)
判決は、人事権の行使に基づく職位の引下げとしての降格については、使用者は、就業規則等に規定がなくても、人事権の行使として行うことが可能であり、使用者には広範な裁量が認められるが、業務上の必要性の有無、程度、労働者の能力、適性、労働者が受ける不利益等の事情を考慮して、人事権の濫用があると言える場合には、無効となるとしました。
そして、各降格について、社内において原告について否定的な評価がされたことを認めるに足りる証拠はなく、原告は必ずしも小さな減額幅ではないといえる賃金減額を受けていることなどの事情を総合考慮すると、各降格は人事権の濫用に当たり無効であるとしました。
また、第一降格のわずか1か月後に行われた第二降格は、賃金減額を伴う降格を行うにつき明らかに慎重さを欠くものというほかなく、会社が有する広範な人事権を考慮しても、少なくとも過失があるとして、原告に対する不法行為に当たるとし、慰謝料30万円を認めました。
※確定