【解雇事件マニュアル】Q31労基法上の産前産後休業中の労働者の解雇制限とは

(労基法19条)

 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。

② 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

 労基法19条1項本文は、使用者は、産前産後の女性労働者が同法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、当該女性労働者を解雇してはならないとしている。これに違反する解雇は無効である。

 当該規定の趣旨は、当該期間に解雇されると再就職が難しく労働者の生活に脅威を来すことになるため、これを禁止し労働者が安心して休業をとることができるよう保障することにある(水町『詳解労働法』999頁)。

 労基法65条1項の産前休業期間は、出産予定日を1日目として(昭25.3.31基収4057号)、その前6週間(多胎妊娠の場合には14週間)である。予定日から遅れて出産した場合には、予定日の翌日から出産日までの期間も産前休業期間に含まれると解されている(厚労省『労基法下』838頁)。なお、産前休業は労働者が請求した場合にのみ発生するため、労働者が請求せずに就労している場合には、解雇制限の対象とならない。

 また、同条2項本文の産後休業期間は、出産日の翌日を1日目として8週間である。同項ただし書は、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えないとしており、これにより労働者が就労する期間は労基法19条1項の「休業する期間」に含まれない。

 なお、本条により禁止されるのは、休業期間及びその後30日間の解雇であって、当該期間経過後の解雇を予告をすることは禁止されていないと解されている(菅野ら『労働法』741~742頁、業務上災害による療養者について東洋特殊土木事件・水戸地龍ヶ崎支判昭55.1.18労民31巻1号14頁及び栄大事件・大阪地決平4.6.1労判623号63頁)。

Follow me!