Case533 条件付採用期間中の地方公務員に対する本採用拒否の分限免職処分が裁量権の行使を誤ったものとして取り消された事案・宇城市(職員・分限免職)事件・福岡高判令5.11.30労判1310.29

(事案の概要)

 原告労働者は、被告市に臨時職員として2か月間勤務した後、大学卒業と同時に被告市に採用されました。地方公務員法22条は「職員の採用は、全て条件付きのものとし、当該職員がその職において六月の期間を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに、正式なものとする。」としており、原告も6か月の条件付採用とされました。

 原告は、作成した文書の誤字脱字、書式や文体の不統一、印刷方法の不手際、電話・窓口対応等における不備がみられ、担当業務の理解等の点でも不十分な点があり、条件付採用期間において、職務を良好な成績で遂行したと認められないとして、採用から6か月で分限免職とされました。

 本件は、原告が分限免職処分の取消しを求めた事案です。

(判決の要旨)

 判決は、地方公務員法22条の趣旨は、職員の採用に当たり行われる競争試験または選考の方法が職務を遂行する能力を完全に実証するものではないことから、成績主義に基づき、適格性を欠くのに採用された職員の排除を容易にすることにあるとしました。

 もっとも、条件付採用期間中の職員も、すでに競争試験等の過程を経て勤務し、現に給与の支給も受けているから、正式採用になることに対する期待を有し、地方公務員法27条1項は、職員の分限および懲戒について公正性を要求しているとしました。

 そして、条件付採用期間中の職員の分限について、市に相応の裁量権が認められるものの、その裁量権は純然たる自由裁量ではなく、当該処分が合理性を有するものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、裁量権の行使を誤った違法なものになる(大阪府労働部職業管理課長事件・最判昭49.12.17判時768.103)とし、また、条件付採用職員を分限免職するに当たっても、当該職員が現に就いている職位に限らず、異動の可能な他の職位を含めて地方自治体の職員としての適格性を欠くか否かを厳密、慎重に判断する必要がある(広島県教委事件・最判昭48.9.14労判186.45)としました。

 そのうえで、判決は、原告の人事評価について、評価者の恣意が入りすぎて厳しすぎるものとなっており、十分な合理性および客観性を欠くといわざるを得ないとしました。また、市はメンターを交代して原告の指導・支援体制を見直すことや、原告を他の部署へ異動させるなどの代替手段を全く見当していないなどとして、本件分限免職処分は、裁量権の行使を誤った違法な処分として取消しを免れないとしました。

※上告不受理により確定

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