Case535 業務委託契約の塾講師について労組法上の労働者性を認め契約更新拒否が不当労働行為に当たるとした事案・国・中労委(学校法人河合塾)事件・東京地判令5.9.26労判1312.31
(事案の概要)
中央労働委員会による不当労働行為救済命令に対して、原告法人が取消訴訟を提起した事案です。
本件労働組合のC書記長は、業務委託契約の講師として出講契約を更新してきていましたが、法人は、校舎内でのビラ配布(校舎内で職員に「労働契約法改正のポイント」というビラを配布)等を理由にC書記長との平成26年度の出講契約を締結しないとしました。また、法人はC書記長に同年度春期講習を担当させませんでした。これらの件に関して、法人は本件労働組合からの団体交渉申入れを拒否しました。
愛知県労働委員会は、法人がC書記長の平成26年度の出講契約を締結しなかったこと、同年度の春期講習を担当させなかったこと、団体交渉を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、C書記長の現職復帰やバックペイの支払等を命じました。中労委もこれを維持しました。
(判決の要旨)
1 労組法上の労働者性
判決は、①委託契約講師が、法人の事業の遂行に不可欠な労働力を恒常的に供給する者として、法人の事業組織に組み入れられていたこと、②法人が委託契約講師との契約内容を一方的かつ定型的に決定していたこと、③委託契約講師への報酬が、労務提供に対する対価としての性質を有するものとして支払われていることなどから、委託契約講師であるC書記長には労組法上の労働者性が認められるとしました。
2 不当労働行為
判決は、出講契約拒否の理由とされたC書記長のビラ配布について、文書の内容、配布の態様等に照らして、職場規律を乱すおそれや生徒に対する教育的配慮に欠けるおそれのない特別の事情が認められる場合には法人の施設管理権を違法に侵害するものとはいえないとしたうえ、本件文書は組合の主義主張や法人に対する批判が記載されたビラとは性格が異なり、配布行為も業務に具体的な支障を生じさせていないとし、出講契約拒否の理由にはならないとし、その他の拒否理由も正当なものではないとしました。そして、法人がC書記長の平成26年度出講契約を締結しなかったこと及び同年度の春期講習を担当させなかったことは、C書記長の組合活動を嫌悪する不当労働行為意思に基づくもので、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当するとしました。
また、団体交渉の拒否についても、団交拒否の不当労働行為に該当するとしました。
以上より、判決は法人の請求を棄却し、中労委命令を維持しました。
※控訴