Case537 産業医が保健師との定例ミーティングを中止及び廃止したこと並びに無視や差別的な対応をしたことが違法なパワハラに当たるとされた事案・任天堂ほか事件・京都地判令6.2.27労判1313.5

(事案の概要)

 原告労働者2名は、派遣会社A社に雇用され、紹介予定派遣として、被告会社の健康相談室において保健師として働いていました。

 原告らは、健康相談室における上司に当たる被告産業医から定例ミーティングの中止及び廃止、無視などのパワー・ハラスメントを受けたと主張し、被告らに対して損害賠償請求しました。

(判決の要旨)

 判決は、職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境を害し、肉体的・精神的苦痛を与えた場合には、当該言動は、当該労働者に対する不法行為に該当するパワー・ハラスメントであると認められるとしました。

 そして、被告産業医が、原告らと週1回行っていた定例ミーティングを中止及び廃止し、原則メールでの指示に切り替えたことは、原告らとの会話を避けようとする不当な目的の下に、ミーティングの目的、すなわち、保健師と産業医との間で業務に関する認識の齟齬をなくし、共通認識を形成するという業務上の必要性を無視して行われたものであり、パワー・ハラスメントに該当するとしました。

 また、原告らが業務について話しかけた際に、被告産業医が原告らの問いかけを無視してドアを閉めたこと及び被告産業医が入退院した後に他の従業員には「ご迷惑をおかけしました。」などと挨拶していたにもかかわらず、原告らには「指示はまたメールでします。」と飲み述べたことについて、原告らとの接触を避けようとする不当な目的の下に、業務上の必要性の乏しい差別的な対応をとるものであって、パワー・ハラスメントに該当するとしました。

 以上より、判決は、被告産業医及び被告会社(使用者責任)に対して、原告らに各10万円の慰謝料を支払うよう命じました。

※控訴

Follow me!