【パワハラ】Case601 上司が労働者の居宅を捜索した行為や同僚が労働者を嫌悪している旨指摘した行為などが不法行為に該当するとされた事案・JR北海道(パワハラ)事件・函館地判令6.3.27労判1330.74

上司が①労働者の交際相手を特定して示す行為、②労働者の居宅内を捜索する行為、③同僚が労働者を嫌悪している旨指摘する行為、④労働者が誤記入した書類を掲示することは違法なパワー・ハラスメントに該当するのでしょうか。

JR北海道(パワハラ)事件(函館地判令和6年3月27日労判1330号74頁)は、JR北海道の従業員が上司からのハラスメント行為によって精神的苦痛を被ったとして損害賠償を求めた事案で、一部の行為がプライバシー侵害や業務指導の範囲を逸脱する不法行為と認定された事案です。

【事案の概要】

原告労働者(X)は、被告Y社の従業員です。Xは、上司であるA所長、B助役、C事務係、E事務係らが21種類のハラスメント行為を行ったと主張し、Y社に対し、使用者責任または債務不履行に基づき損害賠償を求めました。

Xが主張したハラスメント行為には、以下のものが含まれていました。

①B助役が、Xの交際相手が写された職場紹介のHP写真をグループLINEに投稿し「この中にXの嫁がいます」などと送信した。

②B助役が、C事務係及びE事務係とともに、Xが紛失した従業員2名の印鑑を探すためのX宅へ無断で立ち入り引き出しやクローゼット内を捜索した。

③B助役が、Xに対し「F前総務助役が嫌がっていたぞ。」「Gさんが一緒に働きたくないと言っていたぞ」などと伝えた。

④B助役が、Xが氏名欄に誤って「祈願」(Xは工務所で行われる安全祈願のために勤務変更をした)と記入してしまった勤務変更記録簿を、総務の書棚に掲示した。

【判決の要旨】

裁判所は、Xが主張する行為のうち、上記①~④の4つの行為を不法行為と認め、Y社に使用者責任(民法715条1項本文)が成立すると判断しました。

①の行為

B助役がXの交際相手を特定して総務グループLINEのメンバーに示した行為は、Xの承諾を得ておらず、プライバシーを侵害するものとして違法であるとし、慰謝料5万円を認めました。

②の行為

B助役、C事務係、E事務係がX宅を訪れてXの真摯な承諾なく引き出しやクローゼット等を開けて印鑑を捜索した行為は、相当な業務の範囲を超え、プライバシーを侵害するものとして違法であるとし、慰謝料20万円を認めました。

③の行為

B助役が面談時にXに対し、F前総務助役やGがXを嫌がっていた、一緒に働きたくないと言っていた旨の発言をした行為は、これを聞いたXと他の職員との信頼関係の構築を妨げ、Xの孤立感を深めさせる効果を有するものである一方、業務指導に際して敢えて指摘する必要があるとは認められず、相当性を著しく逸脱し違法であるとし、慰謝料20万円を認めました。

④の行為

B助役がXの誤記入した勤務変更記録簿を総務の書棚に掲示した行為は、仮に業務指導の一環としても、相当性を大きく逸脱し違法であるとし、慰謝料5万円を認めました。

【まとめ】

・労働者の交際相手を特定して示す行為はプライバシーを侵害する不法行為に該当し得る

・労働者の居宅内を捜索する行為はプライバシーを侵害する不法行為に該当し得る

・同僚が労働者を嫌悪している旨指摘することは、労働者と他の職員との信頼関係の構築を妨げるものであり不法行為に該当し得る

・労働者が誤記入した書類を掲示することは不法行為に該当し得る

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