【不当解雇】Case620 条件付採用職員につき勤務成績不良等を理由に行われた条件付採用期間の延長処分及び免職処分が無効とされた事案・羽曳野市事件・大阪地判令7.1.22労判1334.18
【事案の概要】
原告労働者Xは、令和4年4月から同年9月までの条件付で、被告羽曳野市(Y市)の職員(事務職・社会福祉関係事務)として採用され、こども家庭支援課に配属されました。Y市は人事委員会を設置しない地方公共団体です。
Xの上司らは、同年9月21日付の評価報告書において、Xの勤務成績10項目のうち2項目を「可」、8項目を「不可」と評価しました。
Y市は、条件付採用期間満了後の同年10月1日付で、Xの条件付採用期間を令和5年3月まで延長する処分(本件延長処分)を行いました。
その後、Xは同年10月3日から同年12月12日まで適応障害等を理由に病気休暇を取得し、その後も年次有給休暇や婚姻休暇の取得等により、本件免職処分まで一度も出勤しませんでした。
処分行政庁(羽曳野市長)は、延長後の期間の満了日である令和5年3月31日付で、Xを正式採用しないとして免職処分(本件免職処分)をしました。
Xは、本件延長処分が違法であり、これを前提とする本件免職処分も違法であると主張し、免職処分の取消しを求めました。
羽曳野市職員任用規則18条は、「地公法22条1項後段に定める場合のほか、条件付採用の期間終了の際、実際に勤務した日数が90日に満たないときは、当該日数が90日に達するまでその条件付採用の期間を延長するものとする」(90日未満要件)と規定していました。
地公法22条1項(平成29年改正前)
臨時的認容又は非常勤職員の任用の場合を除き、職員の採用は、全て条件付のものとし、その職員がその職において6月を勤務し、その間その職務を良好な成績で遂行したときに正式採用になるものとする。この場合において、人事委員会等は、条件付採用の期間を1年に至るまで延長することができる。
【判決の要旨】
本判決は、条件付採用制度の趣旨および目的を踏まえ、期間延長の要件と任命権者の裁量権の限界について以下の規範を示しました。
「6月の条件付採用により能力の実証ができない場合には、条件付採用の期間を延長する必要があるが、これを漠然と延長することは、正式採用になるとの期待に反し、職員の身分関係を不安定なものにするから、能力の実証を実地に得るために必要かつ合理的な理由がある場合に限り、上記期間の延長が認められると解するのが相当である」。 また、羽曳野市職員任用規則18条の「地公法22条 1項後段に定める場合」についても、「90日未満要件と同様に能力の実証ができないなど必要かつ合理的な理由がある場合に限り認められると解するのが相当である」。
「条件付採用の期間延長は、条件付採用期間中の職員に対する分限処分そのものではないが、条件付採用期間の満了後に直ちには正式採用がされないものであるという点で、分限処分に準ずるものであるから、任命権者に裁量権が認められるところ、その判断が、必要かつ合理的な理由がないにもかかわらずにされたなど、合理性をもつものとして許容される限度を超えた不当なものであるときは、任命権者の裁量権の行使を誤った違法なものと解するのが相当である」。
そのうえで、Xの勤務態度には不適切なところがあり、その勤務成績も芳しいものとはいえないものの、公務員としての適格性を疑われるような事情があるとはいえず、さらに能力の実証が必要であるとはいえないとし、本件延長処分について必要かつ合理的な理由は認められず、本件延長処分は、任命権者が裁量権の行使を誤った違法なものであるとしました。
そして、本件延長処分は違法であるため、延長後の勤務状況を検討するまでもなく、Xは条件付採用期間が満了した日の翌日である令和4年10月1日からY市に正式に採用されたこととなり、本件延長処分を前提としてなされた本件免職処分は、違法なものとして取り消すべきであるとされました。
※控訴審判決有り