【不当解雇】Case623 復職可能とする主治医の診断書がある場合に会社指定医の診断のみをもって復職不可とすることは許されないとされた事案・東京都葬祭業協同組合・東京地判令6.9.25労判1335.45

【事案の概要】

原告労働者Xは、被告Y協同組合で働いていましたが、2021年4月に休みに入り適応障害と診断されました。Y組合は、同年6月、就業規則に基づきXに休職を命じ、休職期間は同年11月30日までとされました。

Xは、同年11月29日、主治医が同年12月1日から復職可能である旨を記載した診断書と復職届をY組合に提出し、復職の意思を表明しました。しかし、Y組合は、同年11月30日、復職の可否を判断するため指定医による受診を求めた上で、休職期間を同年12月14日まで延長しました。Xは同年12月6日に指定医の診察を受け、指定医は一時的な回復の可能性を指摘し、就労は困難であると診断しました。

Y組合は、休職事由が消滅していないとして、同年12月14日付けでXを休職期間満了による自然退職としました。

Xは、本件自然退職の無効等を主張し、労働契約上の地位確認等を求めて提訴しました。

【判決の要旨】

判決は、Xの適応障害の症状は、2021年12月1日時点で、従前の職務を通常の程度に行うことができる程度にまで回復していたと認められ、休職事由は消滅していたとしました。傷病が従前の職務を通常の程度に行うことができる程度にまで回復していれば、休職事由は消滅したといえ、それ以上に、症状が消失することや通院・服薬の必要がなくなることまで求められるわけではないとしました。

指定の診断について、休職期間満了時に休職事由が消滅しているかどうかは自然退職の効力に直結する事項であるから、就業規則の内容にかかわらず、主治医の診断書等の資料が提出されている場合に被告が指定した医療機関での受診結果のみをもって直ちに休職事由が消滅していないものと取り扱うことは許されないとしました。指定医の診断は「一時的な回復の可能性」という抽象的な懸念を指摘するものとみるべきであるとして、復職可能であることを否定する材料とはならないとされました。

結論として、Xは令和3年12月1日時点で休職事由が消滅し就労意思もあったため、本件自然退職によって本件労働契約は終了しないとされました。

※控訴

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