【降格降給】Case624 降格は有効とされたものの周知されていない賃金テーブルによる降給は無効とされた事案・住友不動産ベルサール事件・東京地判令5.12.14労判1335.66

【事案の概要】

原告労働者Xは、被告Y社との間で期間の定めのない労働契約を締結し、平成27年6月には所長に昇格し、職級は所長3級となっていました。

Y社は、平成30年10月、Xに対し、所長の職を解き、職務を営業職に変更する本件降格を行い、職級を営業職1級に変更しました。これにより、Xの月例賃金は、旧賃金テーブル(平成31年4月改定前のもの)に基づき、41万7000円(本俸27万1000円、ポスト手当14万6000円)から37万5000円(本俸20万9000円、営業手当16万6000円)に変更されました。

賃金テーブルは周知されておらず、Y社の就業規則には、本俸の降給について「能力、実績、技量、勤怠等を参酌し、上位または下位に相当すると判断した場合、昇給又は降給することがある」「業務内容の変更に伴い、その業務に相当しないと会社が判断した場合、昇給または降給することがある」との定めがあるのみでした。

Xは、本件降格およびこれに伴う賃金減額は無効であると主張し、労働契約上の地位確認、や差額賃金の支払い等を求めました。

【判決の要旨】

判決は、本件降格およびこれに伴うポスト手当の減額は有効であると判断しました。

しかし、本俸の減額については、判決は、賃金は労働者にとって最も重要な労働条件の一つであるから、これを使用者が労働者との合意なく一方的に変更できるためには、労働契約又は労働契約の内容となる就業規則上の根拠が必要であり、労働契約又は就業規則において、少なくとも賃金を減額する事由及び当該事由に対応する具体的な減額幅が明示されている必要があると解すべきであるとしました。

そして、給与規程上、賃金を決定する際の考慮要素は示されているものの、少なくともどのような場合に、どの程度の金額を減額するのかを読み取ることはできず、賃金テーブルは就業規則ではなく周知もされていなかったことから、労働者の基本給を減額するための根拠としては不十分であるとし、減額を無効としました。

※控訴後和解

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