【賃金減額】Case635 整理解雇を回避することは賃金減額の根拠にならないとされた事案・チェースマンハッタン銀行事件・東京地判平6.9.14労判656.17

【事案の概要】

米国に本店を置く被告Y銀行は、金融界の競争激化や不良債権問題により業績が急激に悪化し、信用格付けが低下するなどの経営危機に直面しました。これに対応するため、Yは世界規模での合理化計画を決定し、その一環として「賃金調整」を実施することとしました。この賃金調整は、原告Xら従業員の個別の同意を得ることなく一方的に行われたもので、資格の格付け見直し(実質的な降格)、基本給の減額(各資格の下限額への引き下げ)、職位手当や特別手当の削減などを含み、年収ベースで最大35パーセントの減額となる内容でした。Xらは、この一方的な賃金減額は無効であるとして、減額前の賃金との差額の支払いを求めて提訴しました。

【判決の要旨】

裁判所は、労働契約において賃金は最も重要な労働条件としての契約要素であることはいうまでもなく、これを従業員の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできないとしました。

Yが減額の根拠として主張した賃金規定は、従業員の「昇給」について定めたものであり、賃金を減額支給することには言及していないため、不利益処分である賃金減額の根拠規定とはなり得ないとしました。

Yは、本件賃金調整が整理解雇を回避するためのものでありやむを得ないと主張しましたが、裁判所は、Yが整理解雇を選択せずに賃金調整を選択した以上、この措置自体の有効性が問われるのであり、整理解雇という措置を選択しなかったことをもって本件賃金調整を有効とすることの根拠とすることはできないとしました。

以上より、本件賃金調整は無効であり、YはXらに対し、賃金調整前の賃金基準に基づいた差額賃金等の支払義務があるとされました。

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