【賃金減額】Case636 定年延長に伴う一方的な賃金減額が根拠を欠き無効とされた事案・一橋出版事件・東京地判平15.4.21労判850.38

【事案の概要】

教科書の出版販売等を業とする被告Y社の元従業員である原告Xは、高年齢者雇用安定法の改正に伴い定年が58歳から60歳に延長された後、58歳に達しました。Y社は、定年延長に当たり、従前の定年であった58歳に達した従業員の基本給を57歳時の70%(後に85%に変更)としました。

 Y社は、Xが58歳に達した平成12年5月以降、Xの基本給を従前の70%(後に85%として再計算)に減額して支給しました。Xは、賃金の減額の効力を争い、減額前の賃金基準に基づく差額賃金等の支払いを求めて提訴しました。

【判決の要旨】

裁判所は、「一般に,雇用契約は継続的契約であるうえ,賃金は最も重要な労働条件としての契約要素であるから,使用者は,契約期間中において,労働者との間の個別の合意や,就業規則または労働協約によることなく,一方的に労働者の賃金を減額することはできない。」としました。

そのうえで、高年齢者雇用安定法は定年制の延長を定めているものの、その期間の賃金等については明文の規定を設けておらず、旧定年時から60歳までの間の労働条件について特段の事情がない限り、旧定年時の直前の雇用条件が継続し、労働者は旧定年に達する直前の月の賃金と同額の賃金請求権を有すると認めるのが相当であるとしました。

そして、Y社の就業規則には「基本給は,本人の能力・技能等を基礎とし…決定する」とあるのみで、賃金の減額については何ら言及しておらず、具体的な要件も定めていないため、これを賃金減額の根拠規定とすることはできないとしました。

したがって、Y社がXの同意を得ることなく一方的に58歳以降の賃金を減額した措置を無効とし、Xの差額賃金等の請求を認めました。

※控訴

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