【配転】Case644 職種限定合意がある場合の労働者の職種変更に係る同意は自由意思によるものであることを要するとした事案・西日本鉄道(B自動車営業所)事件・福岡高判平27.1.15労判1115.23

【事案の概要】

原告労働者Xは、被告Y社(鉄道・バス会社)との間で、職種をバス運転士とする職種限定契約を締結して勤務していましたが、度重なる苦情や事故等を起こしていました。Xが乗客の足をドアに挟む人身事故(本件事故)を起こしたことを契機に、Y社の営業所長はXを乗務から外し、退職を勧めました。 Xは退職を拒否し、労働組合や弁護士に相談した上で、運転士としての勤務が難しいならば他の職種での勤務を希望する旨をY社に伝え、職種変更の「申出書」に署名押印しました。これを受けY社はXを車両誘導係(後に清掃係)に配転しましたが、Xは後に退職し、本件職種変更の合意は強迫によるものであり無効であるなどとして、賃金差額や慰謝料等を求めて提訴しました。

【判決の要旨】

裁判所は、労働契約が職種限定合意を含むものである場合であっても、労働者の同意がある場合には、職種変更をすることは可能であると解されるとしつつ、一般に職種は労働者の重大な関心事であり、また、職種変更が通常、給与等、他の契約条件の変更をも伴うものであることに照らすと、労働者の職種変更に係る同意は、労働者の任意(自由意思)によるものであることを要し、任意性の有無を判断するに当たっては、職種変更に至る事情及びその後の経緯、すなわち、(ア)労働者が自発的に職種変更を申し出たのか、それとも使用者の働き掛けにより不本意ながら同意したのか、また、(イ)後者の場合には、労働者が当該職種に留まることが客観的に困難な状況であったのかなど、当該労働者が職種変更に同意する合理性の有無、さらに、(ウ)職種変更後の状況等を総合考慮して慎重に判断すべきものであるとしました。

もっとも、本件では、Xの請求が棄却されました。

 Xの過去の事故・苦情件数や本件事故後の再教育中の状況から、Xにはバス運転士としての適格性に欠けるところがあり、運転士として乗務を継続することは客観的に困難であったと認定されました。また、所長から退職勧奨や解雇の示唆はあったものの、Xは労働組合の助言を受け、弁護士に相談した上で職種変更を希望する旨回答し、申出書を作成していること、Y社担当者(C課長)は、職種変更に応じなければ解雇になるとは述べておらず、待遇についても説明を行っていたことなどの事情から、本件職種変更に対するXの同意は、強制されたものではなく、Xの自由な意思(任意)に基づくものであったと認められ、職種変更は有効であると判断されました。

※上告・上告受理申立

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