【不当解雇・残業代】Case653 解雇及び残業代不払いについて代表取締役及び事実上の取締役の不法行為責任が認められた事案・甲総合研究所取締役事件・東京地判平27.2.27労経速2240号13頁

【事案の概要】

原告労働者は、雑誌の広告代理店等を営むA社に雇用されていました。被告Y1は同社の当時の代表取締役であり、被告Y2は同社の登記簿上の取締役ではないものの、関連会社の調整役等を務め、対内・対外的に実質的な経営権を行使していた者です。

A社は東日本大震災の影響等で広告収入が激減し、業績が悪化していました。平成24年2月、被告Y2は原告に対し、業績悪化を理由とする突然の解雇(本件解雇)を通知しました。原告はA社を相手取り、地位確認や未払時間外手当等の支払いを命じる判決(前訴判決)を得ましたが、同社は事実上経営破綻し、支払いを行いませんでした。

そこで原告は、被告Y1および事実上の取締役である被告Y2に対し、違法解雇、時間外手当の不払い等が、会社法429条1項の任務懈怠および民法709条の不法行為に当たるとして、損害賠償を求めて提訴しました。

なお、被告らによる前訴判決の責任を免れるための計画倒産がされたという原告の主張は排斥されました。

【判決の要旨】

1. 被告Y2が「事実上の取締役」に当たるか

被告Y2は登記上の取締役ではありませんでしたが、採用面接の全出席や解雇通知の単独実施など、人事や組織再編等の重要事項を実質的に決定していたこと、さらに対外的にも「CEO」等と称していたこと等から、実質的経営者(事実上の取締役)であり、取締役としての責任を負うと認定されました。

2. 解雇が不法行為に当たるか

裁判所は、被告らは、原告に対する本件解雇を行う上で、人員削減の必要性はあったものの、解雇を回避する努力は不十分なものでしかなく、労働者解雇手続を確認しないまま、相当な手続を経なかったもので、これらの事情を総合すれば、本件解雇は、社会通念上相当であるとは認められず、著しい解雇権の濫用に当たるものというべきであるとしました。

そして、代表取締役等の地位にあった被告らは、解雇回避の十分な措置を採らず安易に解雇を行った点で、少なくとも過失があり不法行為責任を負うとしました。

そして、被告らに対して、逸失利益として再就職に必要な期間である3か月分の賃金相当額の賠償を命じました。

3. 時間外労働の不払いが不法行為に当たるか

A社ではタイムカード等による労働時間の客観的管理が全く行われていませんでした。

裁判所は、「使用者がその責務である労働者の労働時間の適切な管理を全くしていなかったのだから、公平の観点に照らし、現に存する証拠関係に基づき、合理的な推計方法によって労働時間を算定することが相当であり、かつ、労働基準法の趣旨にも合致するものと解される。」として、原告が所定労働時間後に業務メールを送信した時刻に基づく推計(メール送信時まで使用者の指揮命令下にあったと扱うこと)を認めました。

その上で、この不払は、被告らが、訴外会社の代表取締役などとして、従業員の出退勤時刻を把握して時間外勤務の有無を確認できるとともに、時間外勤務があるときは、その時間外手当の支払が円滑に行われるような制度を当然整えるべき義務があるのにこれを怠ったことによるものと評価できるのであるから、従業員4名という小規模な会社であった訴外会社において代表取締役などの地位にあった被告らが、上記当然の義務を懈怠して原告に対し時間外手当の支払をしなかった行為は、不法行為を構成するものと認められるとしました。

そして、被告らに対して、未払時間外手当相当額の賠償を命じました。

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