Case204 業務委託のライターに対する会社代表者のセクハラ・パワハラについて会社の安全配慮義務違反が認められた事案・アムールほか事件・東京地判令4.5.25労判1269.15
(事案の概要)
原告は、エステサロンを運営する被告会社と業務委託契約を締結し、ウェブサイトの運営等の業務を行っていました。
被告代表者は、原告に対して、被告会社のエステを体験した上で体験談や感想を執筆する業務を依頼しました。原告は、被告代表者と打合せをしたうえ、無料で被告代表者による施術を6回受けたうえ、コラムの執筆等の業務を行いました。
本件は、原告が、上記打合せや施術中、また業務を遂行するうえで被告代表者からハラスメント行為を受けたとして、被告代表者(不法行為)および被告会社(安全配慮義務違反)に対して慰謝料500万円等を請求した事案です。
なお、被告会社が業務委託契約の存在自体を争っていたため、原告は、被告会社に対して業務委託契約に基づく報酬請求もしており、請求が認められています。
(判決の要旨)
判決は、被告代表者が、原告に対して、①打合せの際にこれまでの性体験や自慰行為等に関する質問をしたこと、②1回目の施術中に無理やりにでも裸になった方が施術のときにくすぐったく感じなくなるなどと述べてバストを見せるよう求めたこと、③6回目の施術中に施術用の紙パンツを脱ぐよう指示し、3回にわったって原告の陰部を触った上、自分の陰部を触るよう要求したこと、④打合せの際に性交渉をさせてくれたら食事に連れて行くなどと述べ、キスをするように迫り、原告の腰を触り、原告の臀部に自分の股間を押し付けたこと、⑤原告が執筆した記事の質が低いことなどを理由として契約を打ち切る旨を告げ、原告が被告会社の専属として仕事をしていなかったことにがっかりしているなどのメッセージを送信したこと、⑥今の原告はプロフェッショナルではない、書く記事が全て上位に表示されないのであれば意味がないなどとメッセージを送信したこと、⑦仕事の質が低いことや兼業をしていることなどについて不満を述べた上、⑧原告を抱擁してキスを迫り、原告の臀部に自分の股間を押し付けたこと、⑨打合せの際に原告を抱擁し、キスをしようとした上、上半身の着衣を脱ぐよう指示し、訴外女性Aと互いに相手の胸を触るよう指示したこと、⑩原告とは契約も交わしていないし、今の状況ではスキルが低すぎるので契約は交わせない旨、育ててほしいのであれば報酬は要求しないでほしい旨等のメッセージを送信した事実を認定しました。
そのうえで、被告代表者の上記一連の言動は、原告の性的自由を侵害するセクハラ行為に当たるとともに、本件業務委託契約に基づいて自らの指示の下に種々の業務を履行させながら、原告に対する報酬の支払を正当な理由なく拒むという嫌がらせにより経済的な不利益を課すパワハラ行為に当たるとしました。
また、原告は、被告代表者の指示を仰ぎながら業務を遂行しており、実質的には、被告会社の指揮監督の下で被告会社に労務を提供する立場にあったものと認められるとし、被告会社は、原告に対し、原告がその生命、身体等の安全を確保しつつ労務を提供することができるよう必要な配慮をすべき信義則上の義務を負っていたとし、被告会社の安全配慮義務違反を認めました。
そして、被告会社と被告代表者に対して慰謝料140万円等の支払を命じました。
※確定