Case307 国が石綿工場に局所排気装置の設置を義務づけなかったことが国賠法上違法であったとした最高裁判例・泉南アスベスト訴訟・最判平26.10.9民集68.8.799

(事案の概要)

 本件は、大阪府泉南地域に存在した石綿工場の元従業員やその遺族である原告らが、国による石綿の粉じん規制が不十分であったため石綿工場での作業により石綿肺などの石綿関連疾患にり患したと主張して国家賠償を求めた事案です。

 国の責任を認めた高裁判決(第1事件)と、国の責任を否定した高裁判決(第2事件)について、最高裁でまとめて審理されました。

(判決の要旨)

 最高裁は、国の責任を認めた第1事件の高裁判決を正当としました。

 すなわち、旧労基法に基づく労働大臣の規制権限について、労働者の生命、身体に対する危害を防止するため、できるだけ速やかに、技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものに改正すべく、適時かつ適切に行使されるべきものであるとしたうえ、昭和33年当時の石綿肺の被害の深刻さや、当時の技術状況に照らして一般の石綿工場に局所排気装置を設置することは技術的に可能であったと言えることなどを考慮して、石綿に関する作業について局所排気装置を設置すべき旨の昭和33年通達が発出された昭和33年5月26日以降、昭和46年4月28日までの間、労働大臣が旧労基法に基づく省令制定権限を行使して局所排気装置の設置を義務付けなかったことは国賠法上違法としました。

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