Case331 新聞の取材に法人を批判するコメントをしたことやビラを配布したことが正当な組合活動の範囲内であるとして懲戒事由にならないとされた事案・学校法人橘学苑事件・横浜地判令4.12.22

(事案の概要)

 被告法人が運営する学校で常勤講師をしていた原告らは、原告らを含む教員ら並びに卒業生及び在校生の保護者らが法人に対して提起していた別件訴訟について、新聞記者からの取材に応じました。これにより、「教員いじめ、部活動差別も…6年で教員69人退職の学校を提訴」との表題の新聞記事に「多額の補助金を受け、私学とはいえ公共性は高い。現状は一部の経営陣の私物化が激しい。誰のための学校なのかを考え、正常な学校に戻したい」との原告Aのコメントや、「不透明な経営を変えなければならない。生徒にも教員にも人生がある。不当な扱いを受けるのを看過できない」とのコメントが掲載されました。

 法人は、上記コメントを理由に原告Aに対して7日間の停職処分、原告Bに対して6日間の停職処分をしました。

 また、法人は、原告らが別件訴訟を行っていることや所属する労働組合名義のビラを配布したことを理由に原告らに対して諭旨退職処分をしました。原告らは諭旨退職に応じなかったため懲戒解雇されました。

 本件は、原告らが法人に対して、停職処分及び諭旨退職処分の無効を主張して、雇用契約上の地位確認等を求めた事案です。

(判決の要旨)

1 停職処分について

 判決は、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的の下で組合活動として表現行為を行う場合には、その記載表現が厳しかったり、多少の誇張が含まれたりしていても、性質上やむを得ないというべきであり、そのような表現行為によって、使用者の運営に一定の支障が生じたり、使用者の社会的評価が低下したりすることがあっても、使用者としては受忍すべきものであるといえるとしたうえ、表現行為が組合活動の一環として行われている場合、当該表現が、使用者の社会的評価を低下させるような事実を公表したり使用者を批判する意見を公表したり、その結果、使用者の運営に一定の支障が生じるものであったとしても、①当該表現行為が、労働条件、労働環境等の改善及び使用者の経営方針、活動内容等の改善を求める目的でされており、②当該表現行為を行った手段、態様などが必要かつ相当なものであり、③当該表現が、虚偽の事実を記載したものであったり、殊更に事実を誇張又は歪曲したりしたものではないなどのときには、正当な組合活動として、懲戒処分の理由にすることは許されないとしました。

 そのうえで、原告らのコメントは組合活動として正当な範囲を逸脱しているとはいえないとして、懲戒事由にならないとし、原告らに対する停職処分を無効としました。

2 諭旨退職処分について

 判決は、原告らによる別件訴訟の提起は法人に対する不法行為に当たらないから、懲戒事由とすることは許されないとしました。

 また、原告らによるビラ配布も1と同様に組合活動として正当な範囲を逸脱しているとはいえないとして、懲戒事由にならないとし、原告らに対する諭旨退職処分(及び懲戒解雇処分)を無効としました。

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