Case333 警察官の拳銃自殺につき精神に不調を来している者に対して拳銃携帯義務を免除することを怠った安全配慮義務違反が認められた事案・神奈川県事件・横浜地判令4.7.29

(事案の概要)

 新人警察官であった本件労働者は、仕事の悩みを積み重ね、ある日交番勤務ができなくなるほどに落ち込み、上司らに仕事を辞めようか悩んでいると述べました。上司らは本件労働者を一人で帰宅させることができないと判断し本件労働者を姉に引き渡しました。

 その数日後、本件労働者は、出勤して拳銃を受け取った直後に拳銃自殺しました。

 本件は、本件労働者の両親である原告らが、神奈川県に対して、拳銃管理責任者の安全配慮義務違反を主張して損害賠償請求した事案です。

(判決の要旨)

 判決は、県は、県の公務員に対し、県の公務員が県もしくは上司の指示のもとに遂行する公務にあたって、公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき安全配慮義務を負っており、安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって定まるとしました。

 そして、警察官は、原則として、拳銃の携帯が義務付けられていることからすると、拳銃の携帯を義務付けることにより、警察官の生命及び健康等の危険が生じるおそれがあると認められるときは、県は、安全配慮義務の内容として、拳銃の携帯の義務付けを免除する義務(拳銃を使用する業務に就かせない義務を含む。)を負うとし、警察官が精神障害などの病気を患っていたり、その疑いがあったり、さらには、精神に不調を来していると認められるときには、原則としてこれに該当するものと解され、例外的に、生命及び健康等の危険が生じるおそれがないと確認できる場合には特に該当しないものと解されるとしました。

 そのうえで、本件労働者が交番勤務ができなくなって姉に引き渡されるまでの間に、本件労働者が精神障害などの病気を発症していた疑いが否定できず、精神に不調を来しているということができ、拳銃管理責任者は、本件労働者から改めて事情を聴取したり経過を観察したりすることなく、本件労働者の態度や説明から、本件労働者の悩みが解消して精神の不調が解消したと即断して拳銃を貸与し、改めて本件労働者の生命及び健康等の危険が生じるおそれがないと確認すべき義務を怠ったとして、県職員の安全配慮義務違反を認めました。

Follow me!